
このケースは、今からおよそ10年前、離婚と借金、そして事業の失敗を経験した一人の男性との出会いから始まりました。Pathos Fores Design という名前はまだありませんでしたが、「お金」「時間」「自己評価」が複雑に絡み合うそのプロセスは、いま振り返ると PFD の土台となる問いをすでに含んでいたように思います。
ケースの背景──「ウツロな目」をした40代半ばの営業マン
アーユルベーダ体質(ドーシャ)を3分でセルフチェック
いまのあなたの傾向(ヴィクリティ)を簡易判定。
結果はPDFレポートで保存でき、日々のセルフケアのヒントもついてきます。
- Vata / Pitta / Kapha の割合を可視化
- 暮らしの整え方(食事・睡眠・運動)の要点
- そのまま PDF で保存・印刷 可能
※ 医療的診断ではありません。セルフケアの参考情報としてご活用ください。
最初に彼と会ったとき、その目はどこかウツロでした。奥さんの借金を背負い込んだうえで離婚に至り、事業にも一度失敗している。そうした経緯が、表情や佇まいのすべてににじみ出ていました。
40歳半ばといえば、本来なら組織の中でも重要なポジションを任され、仕事のうえでも脂が乗ってくる時期です。しかし、当時の彼からは、そうした「旬」を感じさせるものはほとんど伝わってきませんでした。
これといって目指しているものもなく、将来の夢も描けていない。そもそも、何のために私を探し当て、訪ねてきたのかさえ、本人の中で言語化されていないように見えました。
それでも不思議なことに、私は「この人は変わっていける」とどこかで確信していました。なぜなら、彼の姿が、かつての自分自身と重なって見えたからです。
「嘗ての自分」との重なり──セールスコンサルが活きる場面
彼の職種は営業職でした。これは、私自身がもっとも得意としてきた領域でもあります。セールスの現場で、数字と向き合い、人と向き合い、失敗と試行錯誤を繰り返してきた経験が、そのまま活かせる案件だと感じました。
それ以上に大きかったのは、「かつての自分と同じ匂い」がしたことです。自信を失い、何を目指していいか分からなくなり、それでもどこかで「このままでは終われない」と感じている──その感覚を、私は痛いほど知っていました。
だからこそ、「彼を何とかしていける」という根拠の薄い自信と、「今度は自分が『あのとき欲しかった伴走者』になってみよう」という気持ちが、静かに背中を押していたのだと思います。
初回の対話──「お金の見方」と「時間の使い方」に潜んでいた罠
初回カウンセリングの段階で、彼のお金に対する考え方には、いくつかの「クセ」があることが見えていました。借金の金額そのものよりも、
- お金の出入りの全体像を把握していないこと
- 目先の支払いにばかり意識が行き、本質的な見直しが後回しになっていること
- 「自分はお金に弱い」という思い込みが、判断を曇らせていること
こうした要素が重なり合って、借金問題をより複雑なものに見せていました。実際には、金融知識とお金の流れを整理し直せば、構造としてはそれほど難しいケースではありませんでした。
同時に、彼の「習慣」にも問題があることが分かってきました。時間の使い方を詳しく見ていくと、
- 本来集中したい仕事の時間が細切れになっている
- 疲れや不安を紛らわすための行動に、かなりの時間を割いている
といった傾向が見えてきます。そこで、時間に対する考え方と配分を一度フラットに棚卸しし、少しずつ組み替えていくことから始めました。
「借金からの解放」はゴールではなく、スタートラインだった
お金の流れを整理し、条件の悪い借り方を見直し、支出の中身を一緒に検証していく。そうした地道な作業を重ねた結果、約2カ月ほどで、彼は借金の問題から一旦は解放されるところまでたどり着きました。
借金がなくなった瞬間、彼の表情は目に見えて変わりました。顔つきが明るくなり、声にも張りが戻ってきます。枠にはまっていた視野が、少しずつ広がっていくような感覚もあったのだと思います。
とはいえ、これはゴールではなくスタートラインです。お金の問題は、一度片付ければ終わり、という性質のものではありません。彼自身が「どのようなお金の付き合い方をしたいのか」を再定義し、それを習慣として定着させていく必要があります。
そこで並行して、時間の使い方と営業のスタイルそのものも見直し、「少ないエネルギーで、より成果につながる動き方」へとシフトしていくことにしました。
6カ月後の違和感──「会社の業績は下がっているのに、自分だけ成績がいい」
借金問題が落ち着き、時間と行動のパターンが整い始めてから、およそ6カ月が経った頃のことです。彼が少し困ったような表情をしながら、こんなことを言いました。
「Masaさん、なんだか変なんです。会社全体の業績は下がっているのに、自分の営業成績だけが良くて…。これって、何かおかしくないですか?」
それを聞いた私は、思わず笑ってしまいました。
「それ、普通ですから。」
もちろん、単に「頑張ったから結果が出た」という話ではありません。彼が変えたのは、
- お金との付き合い方(不安に振り回されないための視点)
- 時間の使い方(何にどれだけのエネルギーを配分するか)
- 営業のスタイル(自分の強みを活かせる場面に集中すること)
といった、「土台」となる部分でした。会社の業績という大きな流れとは別に、自分の行動と選択の質が変われば、その分だけ自分の数字も変わっていく。彼はそのことを、実感として受け止め始めていたのだと思います。
※上記はあくまでも一つの事例であり、絶対的な成果や効果を保証するものではありません。
10年後のあとがき──「お金」「時間」「自己評価」はつながっている
このケースを振り返ってみると、「借金からの解放」「営業成績の向上」という目に見える変化の裏側には、より深いレベルでの変化がありました。
- 借金の有無だけでなく、「お金をどう位置づけるか」が変わったこと。
- 時間を「なんとなく過ぎていくもの」ではなく、「自分で配分し、意味づけできる資源」として扱い始めたこと。
- 「自信のない自分」から、「試行錯誤してもいい自分」へと、自己評価の軸が少しだけ動き始めたこと。
当時の私は、それをまだ言語化しきれていませんでしたが、今の言葉で表現するなら、
お金と時間の「扱い方」が変わるとき、人は自分の物語の「主人公としての位置」に戻っていく
その過程を目の当たりにしていたのだと思います。
Pathos Fores Design は、こうしたケースの積み重ねの上に生まれたコンセプトです。
数字やノウハウだけでなく、「何のために?」という問いを一緒に見つめ直すこと。その先に、ライフプランや資産設計が、単なる計画表ではなく「自分なりの物語」として立ち上がっていきます。
あなたへの問いかけ──今の「お金」と「時間の使い方」は、どんな物語につながっているか
このケースは、一人の営業マンの物語でありながら、私たち誰にとっても他人事ではありません。
もし今、あなた自身が
- 借金や将来のお金の不安に、心と時間を占領されかけている
- 40代・50代になっても「自分の旬」を実感できずにいる
- 何となく毎日をこなしているうちに、「本当にやりたかったこと」が見えなくなってきた
そう感じているとしたら、一度立ち止まって、
「今のお金と時間の使い方は、どんな物語につながっているのか」
と自分に問いかけてみる価値があります。
それは、過去を責めるための問いではなく、これからの人生をもう一度、自分の手に取り戻していくための問いです。もし、その問いを一人で抱えるのが少し重たく感じられるなら、対話という形で一緒にほどいていくこともできます。必要だと感じたタイミングで、いつでも扉をノックしてください。



