1組目は、紅白歌合戦などにも出演されていたミュージシャンの方。キャッシュフローの改善と不動産取得に関するご相談で、1年間コンサルさせていただき、滞りなく役目を終えることができました。
もう1組が、このケースの主役である著名な俳優の方であり、同時に芸能プロダクションの経営者でもある方でした。こちらは3年間継続していただき、現在はアセットマネジメントのみをお手伝いしています。
ケースの背景──「宝の持ち腐れ」と感じた、もったいない経営状態
初めてお会いしたときの印象を正直に言えば、「これは宝の持ち腐れだな」というものでした。俳優としての知名度、プロダクションとしてのポテンシャル、関係者とのネットワーク──どれをとっても、普通の経営者にはない強みを多く持っている。
にもかかわらず、それが十分に活かされていない。数字や組織の動かし方を見る限り、「もっとうまく構造を組み直せば、かなり違う景色が見えるはずなのに」と感じざるを得ない、もったいない状態でした。
とはいえ、外から見て「もったいない」と感じるだけでは何も変わりません。そこで、現状のビジネス構造やキャッシュフロー、意思決定のプロセスなどを丁寧にヒアリングしていきました。
7つの改善点──「一流の実行力」が発揮された2回目セッション
セッション2回目の段階で、私は彼女のビジネスに関して7つの改善点を提示しました。ここでは詳細には踏み込みませんが、方向性としては次のようなものです。
- 収益性の低い仕事と高い仕事の切り分け
- ブランド価値に見合った価格設定の見直し
- マネジメントと現場を切り分けるための役割設計
- キャッシュフローの滞りを減らす契約・支払い条件の再調整
- 既存の強みを活かした新しい収益ラインの検討
- 紹介・リピートを自然に生み出す仕組みづくり
- ご本人の時間の使い方そのものの再設計
「ここまで踏み込んで大丈夫かな」と一瞬迷うほど、具体的で直球な提案も含まれていました。しかし彼女は、それを真正面から受け止め、淡々とメモを取りながら聞いていました。
そしてその後、彼女は驚くべき行動を見せます。
7つの改善点のうち、5つを1週間で実行してしまったのです。
正直、私は内心で舌を巻きました。流石、どんな分野においても一流と呼ばれる人は、決して「頭がいい」というだけではない。自らの状況を直視し、必要だと判断したことを、迷いすぎずに実行に移す。その実行力こそが、一段上のステージへと押し上げる原動力なのだと、改めて思い知らされました。
年商1.5倍、そして2倍へ──「再現可能な現象」になりつつあった手応え
7つの改善点のうち5つを一気に動かした結果、ビジネスの数字はすぐに反応し始めました。
- 約2カ月後には、年商ベースで1.5倍の見込みが立つ状態に。
- さらにその半年後には、年商が2倍に到達しました。
もちろん、彼女自身がそれまで積み上げてきた実績と信頼が土台にあったからこそ実現した変化です。ただ、私にとって大きかったのは、
「クライアントの収入がなんとなく増えていく現象」を、再現できるパターンとして捉え始めていたタイミングだったことでした。
それまでの10年間、私はさまざまなクライアントの事例を通じて、「収入や事業の状態が、じわじわと良い方向に変化していくプロセス」に共通する要素を研究し続けてきました。
この俳優の方のケースは、その仮説に確信を持ち始めていた時期に起きたものであり、「やはり、この方向性で間違っていない」と背中を押してくれる出来事でもあったのです。
紹介と贈り物、そして娘へのひと言──一流の立ち居振る舞いに触れて
彼女は、毎年の成果にとても満足してくださり、何人もの方をご紹介くださいました。それだけでなく、
- 毎回、小粋な贈り物と丁寧な感謝のお手紙
- 主演された映画の試写会への招待
- 舞台へのご招待
など、一つひとつの関わりに、さりげない気遣いが込められていました。
なかでも、私が一番心を動かされたのは、私の娘への心遣いでした。ある機会に、彼女は娘に向かって、こう伝えてくれたのです。
「お父様のお陰で、経営が順調になりました。」
実際には、経営を軌道に乗せたのは、紛れもなくご本人の力です。
私の役割は、その力が適切な方向に向かうよう、少しだけ言葉と構造で支えただけに過ぎません。
それでも、自分の成果を「誰かのお陰」として語る懐の深さと、その言葉を私ではなく、娘に向けてくれたことに、一流の人の立ち居振る舞いを見ました。
その瞬間、私は「自分はここまでできているだろうか」と、慙愧の念に近い感情を抱かざるを得ませんでした。
プロとしての技術や知識だけでなく、人としてのあり方そのものを問い直させられた経験でもあります。
※上記はあくまでも一つの事例であり、絶対的な成果や効果を保証するものではありません。
あなたへの問いかけ──「実行力」と「立ち居振る舞い」は、どんな未来を連れてくるか
このケースは、一人の俳優であり経営者である方の物語ですが、その背後には、次のような問いが隠れています。
- 自分の持っている資源や才能を、「宝の持ち腐れ」にしてしまっていないか。
- 変えたほうがいいと分かっていることを、どれくらいのスピードで実行に移せているか。
- 成果が出たとき、その結果を誰のお陰だと語るのか。
もし今、あなたが
- ポテンシャルはあると言われながら、どこかで「もったいない」と感じている
- 改善点は見えているのに、なかなか着手できずにいる
- 数字だけでなく、「立ち居振る舞い」も含めて、自分の次のステージを整えたい
そう感じているなら、一度立ち止まって、
「自分は何を実行し、何を誰のお陰だと語りたいのか」
という問いを置いてみてもいいのかもしれません。
数字や戦略だけでなく、「どんな在り方で成果と関わるのか」という部分も含めて、あなたの物語を編み直してみましょう。
もし、ご自身のポテンシャルをもう一歩だけ先へと開きたいと感じたときは、どうぞお声かけください。



