男性の平均寿命は80.79年で平成26年よりも0.29年増えました。
女性の平均寿命も87.05年と平成26年と比較して0.22年増えました。
※平成27年簡易生命表より
合計特殊出生率は1.46(平成27年)と前年を0.04上回わりましたが、依然として低い水準に留まっています。
このような高齢化と少子化により全人口に占める65歳以上の人口の割合は26.7%(平成27年)と前年よりも更に0.7%上昇しています。
つまり、4人に1人以上が高齢者ということになります。
また、75歳以上の人口を見てみるとこちらも上昇を続け、8人に1人が75歳以上というのが今の現状です。
少子高齢化が社会保障制度に重大な影響を及ぼす中において、自助努力による経済的な準備がますます重要になってきます。
こうした環境の中で変化を強いられていく、4つの保障領域の現状とそれらの経済的準備状況について、平成28年度「生活保障に関する調査」(平成28年12月生命保険文化センター発行)に基いて解説していきましょう。
保障設計に大切な4つの保障領域とは、
- 医療保障の領域
- 介護保障の領域
- 死亡保障の領域
- 老後保書の領域
上記の4つの領域になります。
それでは、それぞれの領域について見ていくことにしましょう。
医療保障の領域
ケガや病気に対する不安の有無とその内容
自分がケガや病気をすることについて「不安感あり」とする人は90.1%で、医療保障に対する不安意識が高いことがわかります。
「不安感あり」の具体的な理由は、以下のとおりです。
- 家族の肉体的・精神的負担をかける(54.2%)
- 長期の入院で費用がかさむ(53.6%)
- 後遺症や障害が残る(47.5%)
- 3大疾病にかかる(42.5%)
- 障害などにより就業不能となる(42%)
- 公的な医療保険だけでは不十分(41.9%)
- 不慮の事故にあう(41.7%)
医療保障に対する私的準備状況と今後の準備意向
医療保障に対する私的な経済的準備状況をみると、
- 準備している(84.2%)
- 準備していない(14.1%)
- わからない(1.7%)
上記のようになっていますが、今後の準備意向をみてみると、
- 準備意向あり(65%)
- 準備意向なし(31.5%)
- わからない(3.5%)
上記のデータから見て取れるように準備はしていているが、十分ではないと感じている人が多いと考えられます。
介護保障の領域
自分が将来要介護状態になった時の不安の有無について、「不安感あり」は90.6%で、介護保障も医療保障と同様、非常に大きいことがわかります。
「不安感あり」の具体的な理由は以下のとおりです。
- 家族の肉体的・精神的負担(67.9%)
- 公的介護保険だけでは不十分(60.4%)
- 家族の経済的負担(57.9%)
- 介護サービスの費用がわからない(49.1%)
- 家族の時間を拘束する(48.2%)
- 自助努力による準備が不足する(41.1%)
介護保障に対する私的準備状況と今後の準備意向
介護保障に対する私的な経済的準備状況をみると、
- 準備している(47.8%)
- 準備していない(49.2%)
- わからない(3.1%)
上記のようになっていますが、今後の準備意向をみてみると、
- 準備意向あり(74.0%)
- 準備意向なし(20.6%)
- わからない(5.4%)
上記のデータからすると、介護に対する不安感は強いものの、介護に対する認識や制度に対する知識が不十分であり、何をどのように手配したらいいのかわからないでいるということが考えられます。
死亡保障の領域
自分に万一のことが合った場合に遺族の生活について「不安感あり」とする人は69.9%で医療保障や介護保障など他の保障領域に比べると不安感の割合は低いです。
「不安感あり」の具体的な理由は以下のとおりです。
- 遺族の日常生活資金が不足する(43.8%)
- 遺族年金などの公的保障だけでは不十分(43.7%)
- 配偶者の老後の生活資金が不足する(35.9%)
- 子どもの教育資金が不足する(25.8%)
- 葬儀費用がたくさんかかる(14.7%)
- 住宅ローンや家賃の資金が不足する(11.1%)
死亡保障に対する私的準備状況と今後の準備意向
死亡保障に対する私的な経済的準備状況をみると、
- 準備している(73.5%)
- 準備していない(24.0%)
- わからない(2.5%)
上記のようになっていますが、今後の準備意向をみてみると、
- 準備意向あり(59.2%)
- 準備意向なし(35.7%)
- わからない(5.1%)
という結果になっています。
老後保障の領域
自分自身の老後生活について「不安感あり」とする人は85・7%と相変わらず高い水準となっています。
「不安感あり」の具体的な理由は以下のとおりです。
- 公的年金だけでは不十分(80・9%)
- 日常生活に支障が出る(57.2%)
- 自助努力による準備が不足する(38.1%)
- 退職金や企業年金だけでは不十分(36.7%)
- 仕事が確保できない(32.8%)
- 配偶者に先立たれ経済的に苦しくなる(24.6%)
老後保障に対する私的準備状況と今後の準備意向
老後保障に対する私的な経済的準備状況をみると、
- 準備している(64.8%)
- 準備していない(33.0%)
- わからない(2.1%)
上記のようになっていますが、今後の準備意向をみてみると、
- 準備意向あり(72.4%)
- 準備意向なし(23.0%)
- わからない(4.6%)
現在行っている経済的な準備のなかで重視しているのは、男性の場合は「自分が入院した場合の準備」が最も高く、「自分が万一の際の準備」「自分の介護資金の準備」「自分や配偶者の老後資金の準備」が挙げられています。
一方女性の場合は、「自分が入院した場合の準備」が最も高く、「配偶者が入院した場合の準備」「配偶者が万一の際の準備」「自分や配偶者の老後資金の準備」が挙げられています。
また老後のゆとりのための資金の使い方としては、以下のようになっています。
- 旅行やレジャー(60.6%)
- 身内とのつきあい(50.1%)
- 趣味や教養(49.7%)
- 日常生活費の充実(49.0%)
- 耐久消費財の買い替え(27.2%)
- 子どもや孫への資金援助(23.4%)
なお、私的な生活保障の準備を現在の生活を切り詰めても行う必要があるかについては、準備すべきだとする人が67.4%で、必要なしとした人が29.5%となっています。
老後の生活費を賄う手段について
- 公的年金(87・5%)
- 預貯金(70.4%)
- 企業年金・退職金(40・5%)
- 個人年金保険(33.3%)
- 老後も働いて得る収入(18%)
- 生命保険(12.7%)
老後に不安感を抱いている人が多い中、公的年金だけでは老後は送れないと感じながらも実質的にはそのほとんどを公的年金に依存しなければならないという現状をどう切り抜けていけばいいのか。
使うお金を減らし、老後に備えて貯蓄する。
手持ち資金を運用する。
老後も収入が得られるようなアイデアを考え実行する。
そのいずれかを実行するのではなく、この3つを同時に試みることによって、初めて老後に対する不安が極限まで軽減できることでしょう。
次回は、生命保険の死亡保障額の決定要因でもある、遺族年金の仕組みとその注意点についてです。
ではまた。。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。