
今回の不動産活用コーチングは、公法と私法、区分所有、建物管理、マンションストックについてです。
不動産活用(公法と私法)
ここでの主なポイントは以下のようになる。
- どの法を適用するかは、関係成立が借地借家法の施行前か後かによって異なる。
- 借地借家法には、定期借地権制度、定期借家制度が設けられる。
- 借地借家法には、正当事由の内容が明文化されている。
公法と私法について
一般に、公法は行政主体と私人との間に適用される法律を言う。
私法は私人と私人の間に適用される法律をいう。
公法は行政法ともいわれ、強制力を持った法律だ。
したがって、守らないと公権力によって罰則などが適用される。
それに対して、私法は、私的自治を原則とし、強制しない法律というわけだ。
中でも土地は私的所有権が認められているのはご承知の通りだ。
しかし、限りある公共財としての側面も持っていることを忘れてはならない。
そのため取引や利用を私人の自由意思で行うことを公法で一部制限しているのだ。
土地基本法の中で、土地に関する施策の基本になる事項が定められている。
具体的には、土地についての公共の福祉優先を前提にした上で、土地利用について以下のように定めている。
- 適正な利用および計画に従った利用。
- 投機的取引の抑制。
- 価値の増加に伴う利益に応じた負担。
こうした原則を基本とし、取引にあたっては国土利用計画法、農地法などの規制が、
また、その利用にあたっては都市計画法、建築基準法などの規制が行われている。
したがって、不動産を扱う上でこれら関連法規に関する知識は欠くことができないだろう。
私法には、適用領域を限定しない広範な人・物・事柄を対象とする法律と適用領域を限定する法律がある。
別な言い方をすれば、前者を一般法または原則法、後者を特別法と称している。
一般法の規定と特別法の規定が異なっているときは、特別法を優先することになっている。
つまり、「民法」である一般法より、特別法である「借地借家法」や「建物の区分所有などに関する法律」が優先されるということだ。
例えば、民法の賃貸借の規定(民法604条)では、「賃貸借の存続期間は20年をこえることができない」となっているが、借地借家法では、「借地権の存続期間は30年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは有効J(借地借家法3条)としている。
そのため建物所有を目的とする土地の賃貸借契約をする場合は、期間を30年以上としなければならないということになる。
私人同士の契約関係は、契約自由の原則により、当事者の自由な意思によって決定することができる。
契約で決めていないことに関して争いなどが起こった場合は民法の規定に従うことになる。
どういうことかというと、当事者の意思の明確でない部分について補充的に用いられるという民法の性質上、その規定と異なる特約を結ぶことも可能だということだ。
だが、当事者の立場が平などでない場合、例えば経営者とその従業員といったケースではどうだろうか?
こうしたケースでは、個人の自由意志が阻害され、本質的には一方的に従わぎるを得ないとも解釈できる。
そう、こうした弱い立場の者が不利になるような特約は無効とされる。
こうした扱いをする規定を強行規定という。
借地借家法には、こうした強行規定がある。
例えば、「この法律の規定に反する特約で借地人や借家人に不利なものは無効とする」と明記されている。
区分所有について
では、区分所有に関してはどうだろうか?
- 区分所有法に規定する専有部分の要件。
- 法定共用部分と規約共用部分について理解する。
- 区分所有法の集会の決議基準を理解する。
建物の部分を目的とする所有権を区分所有権という。
具体的には、1棟の建物に構造上区分された数個の部分、例えば、独立して住居・店舗・事務所または倉庫その他の建物としての用途に供することができる部分のことだ。
その典型的な例が分譲マンションだ。
この区分所有権などに関する事項を規定した法律を区分所有法と称している。
専有部分
なお、専有部分として認められるためには、構造上の独立性、機能上(利用上)の独立性といった2つの要件を満たしている必要がある。
ついでに言っておくと、不動産登記記録に記録されている専有部分の面積は、各専有部分(各室)の内側の壁で囲まれた面積で表示されている。
一方、バンフレットなどに掲載されている専有面積は、各専有部分(各室)を仕切っている壁の中心線で囲まれた面積により表示されている。
つまり、壁芯面積よりも内法面積のほうが少なく、実質の利用可能面積は内法面積であることに注意してほしい。
法定共用部分
一方、共用部分は専有部分以外の建物の部分のことで、構造上、区分所有者の全部または一部の共用に供される部分だ。
具体的には、建物の玄関、廊下、階段室、エレベーターホールなどがそれに該当する。
その他建物と一体的に利用される建物の付属物で専有部分に含まれないものがある。
具体的には、建物全体で共用するエレベーター設備、電気・ガス・給排水設備などがそれに該当する。
規約共用部分
専有部分の要件を満たす建物の部分および付属の建物であっても、規約で共用部分とすることができる。
ただし、第二者に対抗するためには登記が必要だ。
所有権の共有、地上権などの準共有
- 専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利を敷地利用権という。
- 敷地利用権が所有権の共有などの権利である場合には、区分所有者は、原則として、その専有部分とその専有部分にかかる敷地利用権とを分離して処分することができない。
建物と敷地の権利者が異なるなど権利関係が複雑になることを防ぐ規定であり、これを分離処分の禁止と言っています。
建物などの管理について
建物などの管理については、集会を開き、規約を定め、管理者を置くことになっている。
これらは、区分所有法に定められている。
区分所有者および議決権の各4分の3以上が参加する集会の決議によって法人成りすることもできる。
この場合、理事と監事を置かなければならないことになっている。
なお、管理会社も存在し、管理組合との契約で実際の管理業務の全部または一部を受託してくれる。
この法律(区分所有法)では、建物または敷地などの管理、使用に関して相互間の事項を規約で定めることができる。
※規約とは、区分所有者が、自主的に定める相互間の約束事項。
区分所有者および議決権の各4分の3以上が参加する集会の決議によって規約の設定、変更、廃上ができることになっている。
規約の効力は、区分所有者のみならず売買などにより取得した者(特定承継人)にも効力が及ぶことに留意してほしい。
なお、賃借人やその家族など(専有部分の占有者)も区分所有者と同様規約に従う必要がある。
管理者は少なくとも毎年1回集会を招集する必要があり、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1を有する者は、管理者に対し集会の招集を請求することができる。
※集会の決議の効力は、規約の効力と同様。
形状または効用の著しい変更を伴う共用部分の変更は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決定することができる。
※区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減らすことができる。
共用部分の変更以外の共用部分の管理に関する事項は、区分所有者および議決権の過半数の決議で決定する。
ただし、もともとの状態を維持・回復させること(保存行為)は、各共有者が単独で行うことができる
建物価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分および自己の専有部分を復旧することができる。
その他建物価格の2分の1をこえる部分が滅失したときは、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数で復旧、5分の4以上の多数で建替えを決議することができる。
義務違反者に対する措置
他の区分所有者の全員または管理組合法人は、共同の利益のため、その行為をやめさせたり、その行為を予防するために必要な措置をとることを請求することができる。
場合によっては、注1集会の決議により訴訟を提起することもできる。※賃借人などの占有者に対しても同様。
マンションストック増大の問題
分譲マンションストック戸数(国土交通省、平成30年5月24日更新資料より抜粋)
上記図の通りマンションストックの増大に伴い、マンションの適正な管理の確立が緊急の課題であったことから、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が平成12年12月1日に制定され、平成13年8月1日から施行された。
概要
管理業者として国へ登録、管理業務主任者の事務所ごとの設置が義務づけられ、重要事項説明、委託契約書面交付義務、修繕積立金などの分別管理などの業務規制を課すことなどが規定された。
マンション管理士
管理組合の運営その他のマンションの管理に関し、相談に応じ、助言・指導などを業として行う者をいい、 名称使用制限、秘密保持義務、講習受講義務、信用失墜行為の禁止などを定めている。
※国土交通省の登録が必要。
なお、マンション管理については、調査する項目も多いため、管理の内容・方法などにつき、マンション管理などの専門家に相談するのも効果的だろう。
次回は借地借家法についてです。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。