効率的市場仮設(EMH)と個人投資家向けの効率的市場仮説?

今日は、効率的市場仮設(EMH)についてだ。

ちょっと上級者向けの内容になるが理解して個人のマネープランにも応用してほしい。

市場が効率的であるなら「市場の効率性」は必須条件になる。

そうだとすると、並みの努力で利益を得ることは非常に困難だとも言えるだろう。

言い換えれば「市場の効率性」の本質を知ることが、投資成果を向上させる上で役立つ。

例えば、株価、債券価格、為替レートなどの資産価格は、そのアセットクラスに投資して得られる将来キャッシュフローによって決まる。

ということは、将来キャッシュフローを、どのような情報に基いて判断するのか?

それが、その資産価格を左右することを意味している。

また、こうした情報が瞬時に資産価格に反映されることについて議論が繰り返されてきた。

それを効率的市場仮説(EMH:EfficientMarket Hypothesis)と呼んでいる。

では、本当に情報が的確に反映され資産価格が決定されているのだろうか?

また、それを見極める方法はあるのだろうか?

一緒に考えてみよう。

まず最初に、それを見極めるための3つの基準から解説する。

  1. 弱度の意味での効率的市場仮説(Weak Form of EMH)
  2. 準強度の意味での効率的市場仮説(Semi‐strOng Form of EMH)
  3. 強度の意味での効率的市場仮説(Strong Form of EMH)

1,弱度の意味での効率的市場仮説(Weak Form of EMH)

弱度の意味での効率性が成立するのは、どのような時だろうか?

過去の資産価格を基にして将来の資産価格を予測しても、超過リターンを得ることはできない。

その状況を意味している。

超過リターンとは、通常のリスクとリターンの関係を上回るリターンのことだ。

例えば、トヨタの過去の株価の推移を見て、明日のトヨタの株価を確実に的中させることはできないだろう。

過去の株価は、誰にでも観察可能で、ほぼリアルタィムで東証の株価を知ることが可能だ。

誰にでも利用可能な情報を活用して、将来の株価を正確に予測することは不可能だ。

したがって、人並み以上の利益を得ることが非常に難しことがわかる。

もし、過去の株価により明日の株価が値上がりすると予測できたなら、誰もが今日の市場で株を買い、売る人がいなくなる。

その結果、今日の株価は極限まで値上がりし、その後に株を売っても利益は得られないだろう。

そもそも予測により超過リターンを得ることは非常に難しい。

毎日の株価の変動額や変化率は大抵ランダムだからだ。

例えば、日経平均株価の昨日から今日にかけてのリターンを横軸にとり、今日から明日にかけてのリターンを縦軸にとって毎日の値をプロットするとわかる。

なんらの時系列相関もみられない。

つまり、昨日から今日にかけての動向がわかっても、今日から明日にかけて株価がどのようになるか、全く予想がつかないということだ。

※プロットとは、観測値などを点でグラフに描き入れること。

2,準強度の意味での効率的市場仮説(Semi‐strOng Form of EMH)

過去の資産価格だけではなく、利用可能なあらゆる情報が資産の価格形成にすでに反映されている状態だ。

新聞、テレビ、雑誌、あるいは企業の発表する財務諸表やアナリスト予想など、有料、無料を問わず誰でも利用可能な情報がたくさんある。

例えば、日本経済新間で毎日報じられる企業業績は、多くの人が目にしている情報のひとつだ。

つまり、利益予想が報じられ瞬間に、その時点で全ての情報が株価に反映されていることを意味する。

過去のデータを基にしても超過リターンは得られない。

3,強度の意味での効率的市場仮説(Strong Form of EMH)

一般の人が利用可能でない情報、例えば、特定企業の内部情報(インサイダー情報)までもが、その時々の株価にすべて反映されている状態だ。

特定の情報を知りうるファンドマネージャーが扱う商品、たとえばアクティブ運用の投資信託を始める。

通常よりも手数料が高く、リスクが大きいと言われているアクティブ運用の投資信託を買う。

それは同時に彼らの能力を信じて資産運用を託すことを意味している。

しかし、実際のアクティブ運用投信の成果を観てみると、特に高いリターンを長期にわたって実現しているわけではない。

また、これは多くの研究や調査で明らかになっていることでもある。

つまり、特別な情報を持っていても、それで特に高いリターンを得られるわけではない。

高いリターンを得ていた場合、単に高いリスクをとっていた結果によるものは大半なのだ。

個人投資家にとつての効率的市場仮説とは?

株や債券、為替などに影響を与える情報は、インターネットやマスコミを通じ、即座に多くの人が入手できることは既に述べた。

こうしたグローバル化や情報化は、今後ますます発展していくだろう。

つまりそれは、巨大な資金を動かすことができる世界中の機関投資家が、より早く、安い手数料や税率、優れた投資技術をもとに投資できることを意味している。

その中で、個人投資家が高いリターンを継続的に得ていくことは非常に困難だろう。

一時、高いリターンを得たとしても、それは単に高いリスクをとっていたからに過ぎない、ということだ。

この現状を考えるとき、特定の資産や株式のリスクがどのようなものかをまず認識する必要があるだろう。

そのリスク水準に見合うだけの期待リターンが実現できているかどうか?

それをあらかじめ確認しておくことが必須条件になってくる。

その高い期待リターンが単なる幸運にすぎないのか?

見通しが本当に優れていたのか?

隠れたリスクを負担しているのか?

それらを分析し、十分確認する必要がある。

伝統的な経済学では、合理的な経済人を仮定しでいる。

しかし、行動経済学や行動フアイナンスの研究では、個人は必ずしもそのように行動しないことが明らかになっている。

人はしばしば極度に楽観的であつたり、逆に悲観的であったりする。

それがバブル経済や資産価格の過度の変動を招き、ひいて失敗をまねいてきた。

したがって、資本市場の効率性とは何かをよく理解し、戦略を立てた上で投資していく必要がある。

そして、その制度を高めていく必要がある。

次回は「行動ファイナンスの知識をマネープランでフル活用する」です。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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