
1. ユングの心理的関数:認識と判断の“型”を知る
ユングは、人が情報を受け取り・処理し・判断するプロセスを4つの関数で説明しました。どれも誰の中にもありますが、強み/使い慣れに偏りが出ます。
- 感覚(Sensation):五感・事実・具体。いま・ここ・実測を重視。
- 直感(Intuition):可能性・パターン・未来像。断片から全体や潮流を捉える。
- 思考(Thinking):論理・比較・一貫性。基準やルールで整える。
- 感情(Feeling):価値・調和・合意。自他の価値観と関係性を勘定に入れる。
外向(Extraverted)/内向(Introverted)、認識機能(Perceiving)/判断機能(Judging)との組み合わせで表れ方は変わりますが、資産形成で重要なのは「自分がどのレンズで世界を見がちか」を自覚することです。
2. 自己理解:あなたの“強みレンズ”と投資の相性
下のメモをコピペして、最近の意思決定(買付/見送り/リバランスなど)を1件だけ振り返ってみてください。
【SCENE】いつ/どんな決定?(例:◯月◯日、決算跨ぎを見送り) 【使ったレンズ】感覚/直感/思考/感情 のうち強く働いたものは? 【良かった点】そのレンズが効いた具体(例:実測データ重視で過度な期待を外せた) 【偏りのリスク】見落とした可能性(例:長期の潮流を過小評価) 【補助レンズ】次回は何を一口だけ足す?(例:直感=3年の構造変化メモ)
関数別に「ハマりやすい罠」と「補助の打ち手」
- 感覚優位:直近データに強いが、長期テーマを軽視しがち。
→ 補助:直感で「3年後の姿」を1段落だけ書いてから発注。 - 直感優位:物語に強いが、根拠の薄さでブレやすい。
→ 補助:思考で「根拠3点(データ/期日/条件)」をチェック。 - 思考優位:一貫性は高いが、機会損失を恐れ慎重過多に。
→ 補助:感覚で「小口でやってみる」を先に置く。 - 感情優位:ESGや関係性に敏感だが、相場変動で疲弊しやすい。
→ 補助:思考で「損切り・サイズ・回復年数」を先に固定。
3. 実装:関数に合わせて“投資プロセス”を設計する
投資対象そのものより、プロセス設計を関数に合わせる方が再現性が上がります。以下は関数別の実装例です(例示であり推奨銘柄ではありません)。
感覚(S)型:実測・具体を軸にする
- 情報収集:企業の四半期データ、利回り、配当履歴、費用率。
- 適性プロダクト例:インデックス積立、配当重視、短期でも“検証可能”な戦略。
- ルール化:エントリ=条件AND3つ、サイズ=許容DDから逆算、出口=期日/価格/事象の三系統。
直感(N)型:テーマと潮流を扱う
- 情報収集:構造変化(人口・技術・規制)と企業の戦略地図。
- 適性プロダクト例:長期テーマ投資、新興分野、成長株・VC的アプローチ(分散と小口が前提)。
- ルール化:物語に根拠を結びつける「根拠3点メモ」を作ってから発注。
思考(T)型:一貫性と最適化
- 情報収集:リスク・リターン特性、相関、期待値、回復年数。
- 適性プロダクト例:分散・低コスト・ルールベース、ポートフォリオ最適化。
- ルール化:逸脱防止に「例外条項の禁止」を明文化。例外は翌月会議まで封印。
感情(F)型:価値整合と持続可能性
- 情報収集:ESG方針、サプライチェーンの透明性、企業文化。
- 適性プロダクト例:ESG/ソーシャルインパクト枠+コアのインデックスで“芯”を持つ。
- ルール化:感情ログ(強度1-10)を記録。閾値8/10以上は翌日に判断。
共通:月次レビューの二重帳簿
【FACTS】売買履歴/勝率/平均損益/最大DD/手数料 【FEELINGS】エントリ直前・直後・保有中の感情(強度1-10) 【PROCESS】ルール順守度/逸脱の引き金(ニュース・SNS・疲労など) 【KEEP/STOP】続ける1つ/やめる1つ 【NEXT EXPERIMENT】来月の最小実験(期日・測定法)
※本記事は一般的な情報提供です。特定の金融商品の推奨ではありません。投資判断はご自身の責任で、必要に応じて専門家へご相談ください。
あなたの“強みレンズ”に合わせて、投資プロセスを設計し直す。
関数の偏りを責めずに活かす。足りないレンズは小さく補助し、プロセスに落とせばブレは減ります。まずは現状のスタイルを一緒に言語化しましょう。