ネガティブ思考

お金を増やす方法とファイナンシャルプランニング、№5

前回はリスクの測定、バリュー・アット・リスク、そしてリスクとリスクプレミアムなどについて解説した。

FP資格を有し、FP業務を提供するものにとってその業務の中心は、何と言っても現在の経済状態を改善し、キャッシュフローを生みだし、そのキャッシュフローを有効に活用できるようにしていくことにある。

そして、個人の家計分野において生活の安定化を測る上でもその周辺知識は極めて重要になってくる。そしてまた、当然ながら会社経営においてもキャッシュフローは経営の要になる。

したがって、キャッシュフローマネジメントは、個人のライフデザインや事業のビジョンを実現するために必要な所得や利益を獲得するという役目を担っている。

そのキャッシュフローマネジメントの一部であるファイナンシャルプランにおける金融資産運用分野では、ポートフォリオ理論やポートフォリオのリスクと期待リターンの関係性について知っておく必要がある。そこで今回はそれらのことについて解説していく。


西洋の格言に「多くの卵を1つの籠に入れるな」というのがありますが、投資で云えば、ある特定の銘柄に集中して投資するのではなく、分散して投資しておくといい、ということになります。

これは、多くの銘柄に分散して投資しておけば、ある特定の銘柄のパフォーマンスが悪いときに、他の銘柄のパフォーマスが良いこともあるということを前提にした考え方です。

では、実際に分散や標準偏差という尺度でリスクを測った時、分散投資によって※ポートフォリオのリスクがどのように軽減できるのでしょうか?

※分散投資による証券の組み合わせ

確率と統計

そのことを、これから確率や統計の考え方を用いて説明しましょう。

まず、なぜ分散するとリスクが小さくなるのか、組み合わせによってリスクをゼロにすることが可能なのか、について考えてみましょう。

分散投資によってリスクがゼロになる場合

例えば、高値水準にある株式Aとそうではない株式Bという値上がり幅、値下がり幅が同じ2つの株式があると仮定した場合、株式の変動(ボラティリティ)リスクは同じです。

また、2つの株のトレンド(傾向)もなく、水平だった場合、変化率、期待リターンも平均的にはゼロになります。

したがって、安値で買って高値で売る、あるいは高値で売って安値で買い戻すとするタイミング戦略でない限り、どちらに投資したとしても結果的には、リスクもリターンも同じことになります。

ところが、この2つの株式を1株ずつ買うことにより、理論上リスクをゼロにすることができます。

なぜそのようなことが可能なのでしょうか?

2つの株式の同じ時点の値上がり益と値下がり益を相殺できる関係が成り立てば、ポートフォリオ全体の上下変動を減少させたり、なくしたりできるからです。

これを統計学の確率論の観点から見た場合、株式Aと株式Bがまったく逆方向に動き、上下変動幅(ボラティリティ)がまったく同じだとしたら、2つの株式を等しい金額だけ投資すれば、価格変動リスクはゼロになります。

他方、完全な逆相関であっても、変動幅が異なる場合は、投資金額を調整することによって、リスクをゼロにすることは理論上可能です。

分散投資よってリスクが変わらない場合

例えば、株式B同様、株価にトレンドがなく、ボラティリティ(変動幅)も株式Aと同じである株式Cがあったとします。

この場合、当然、株式Cのリスクも平均リターンも株式Bと同様になります。

ところが、株式Aと株式Bを1株ずつ組み入れたポートフォリオの変化は「分散投資によってリスクがゼロになる」場合とまったく異なってきます。

分散投資をしたにも関わらず、リスクが減少することなく、変動幅も変わらないという現象が起こる可能性があるのです。

ではどのような場合に、そのようなことが生じるのでしょうか?

株式Cの値動きの方向と幅が株式Aとまったく同じ場合に、このような現象が起こります。

つまり、同じ方向に動くものに投資すると、分散投資の効果、リスク低減効果は小さくなるのです。

仮に完全に連動して動く2つの資産に投資した場合、リスクはまったく軽減できません。

実際、多くの株式銘柄をみてみると、互いにプラス相関を持っている銘柄は多いのですが、完全な相関を持つものはほぼありません。

したがって、これらの株式のみでポートフォリオを組んだ場合、リスクはなくなりません。

相関関係と共分散

以上のことから、ポートフォリオのリスクを算出するにあたっては、各資産のリスクのみではなく、資産間の相関関係を知る必要があるということがわかります。

そして、このことは投資の世界に限ったことではありません。

例えば、2科目の試験の個人ごとの標準偏差を求める場合、単純に標準偏差の和と等しくなるわけではなく、大きくなることもあれば、小さくなることもあります。

このようなことを共分散という尺度を用いると、次のように表現することができます。

2つの変数の和の分散=一方の変数の分散+もう一方の変数の分散+2×両方の変数間の分散。。。

ここで、変数をAとしもう一方をBとし、データの組がN個あると仮定した場合、2つの共分散は次のように表現されます。

AとBの共分散=1/N{(1組目のAの値-Aの期待値)(1組目のBの値-Bの期待値)+(2組目のAの値-Aの期待値)(2組目のBの値-Bの期待値)+・・・・・(N組目のAの値-Aの期待値)(N組目のBの値-Bの期待値)}

例えば、株式Aと株式Bがあり、月次のリターンのデータが下記のとおりだとすると、

1月 2月 3月
Aのリターン 1% 7% 10%
Bのリターン 1% 2% 6%

株式Aと株式Bのリターンは次のように算出されます。

AとBの共分散=1/3{(1-6)(1-3)+(7-6)(2-3)+(10-6)(6-3)}=1/3{(-5)(-2)+{1}{-1)+(4)(3)}=1/3{10-1+12}=21/3=7

両株のリターンが同方向に動く場合、ポートフォリオのリスクが大きくなり、逆方向に働く場合は小さくなるという効果が確認できます。

しかし、その関連性が強いか弱いかを直ちに把握することは非常に困難です。

なぜなら、共分散の値がそれぞれのデータの値に依存するからです。

したがって、各データの標準偏差で基準化した相関係数を算出して相関の強さを把握する必要があります。

相関係数=共分散/一方の標準偏差・もう一方の標準偏差

この相関係数は、常に次式を満たし、その符号は、共分散の符号と一致します。

-1≦相関係数≦1

相関係数が正の時、2つの変数には正の相関があるといい、特に相関係数=1のとき、正の完全相関といいます。

また、相関係数が負の時、負の相関があるといい、特に相関係数=-1のときは、負の完全相関といいます。

※相関係数=0は無相関

2銘柄からなるポートフォリオのリスクと期待リターンの算出

互いに完全に同じ方向に動かないものに等しく投資した場合、ポートフォリオ全体のリスクは減少する、そして、完全に同じ方向に動く2つの株式に投資をするとリスクはまったく減らないということも説明しました。

それでは、2つの株式が完全に相関していない時や均等に投資していない時のポートフォリオのリスクはどうでしょうか?

{※ポートフォリオリスク=(株式Aの投資比率)×株式Aのリスク+(株式Bの投資比率)×株式Bのリスク+(2×株式Aの投資比率×株式Bの投資比率×株式Aのリスク×株式Bのリスク×株式Aと株式Bの間の相関係数}

例えば、2つの株式があり、それぞれの期待リターン、リスク、相関係数が以下のようなケースを考えてみましょう。

株式A 株式B
期待リターン 4% 10%
リスク(標準偏差) 10% 15%
相関係数 -0.6%
投資比率 40% 60%

上記の場合、ポートフォリオの期待リターンは2つの株式の期待リターンを投資比率(0.4、0.6)で加重平均することによって求められ7.6%になります。

そして、上記の計算式にあてはめて計算した結果、ポートフォリオのリスクは7.3%になります。

上記の数値列は投資金額の振り分けがそれぞれ4割と6割でしたが、ポートフォリオのリスクはこの投資比率によって変わります。

例えば、株式Bの投資比率を0%から10%刻みで増やし、同時に株式Aの投資比率を100%から10%刻みで減らしていくことによってどのように変化していくかは、想像できるでしょう。

効率的フロンティア
図1-7

図1-7は2銘柄からなるポートフォリオの期待リターンとリスクの関係を示したものですが、この曲線が個人や家計のファイナンスにとって意味するものは何でしょうか?

点Bは、投資家が株式Bにのみ投資した状態を示しています。
ピンクの点MVは投資家がポートフォリオのリスクを最小にする選択をした状態を示しています。
点MVから点Aの曲線で示される投資選択は、他の場合と比べて劣っています。
例えば、点Aは株式Aのみに投資していることを示していますが、点Aのリスクが10%で、リターンが4%であるのに対し、株式Aに25%とBに75%の投資をしたポートフォリオのリスクもおおよそ同じになります。
しかし、株式Aに25%とBに75%の投資をしたポートフォリオの期待リターンは、Aのみに投資した場合よりも高いです。
こうしたことから、点MVから点Aの曲線で示されるポートフォリオよりも、点MVから点Bの曲線で示されるポートフォリオの方が期待リターンとリスクの両方の観点からみて優位であることは明らかです。
そして、この点MVから点Bまでの曲線を「効率的フロンティア」といいます。
それでは、この「効率的フロンティア」のどこを選択すればいいのでしょうか?
まず言えることは、特定の1点に決めることは出来ないということです。
高い期待リターンを得たい投資家はできる限り点Bに近い点で示されるポートフォリオを選択するでしょう。
また、リスクを嫌う投資家はできる限り点MVに近い点で示されるポートフォリオを選択するでしょう。
最終的には、投資家のリスクとリターン選好の度合に応じて選択が行われるわけです。
そして、効率的フロンティアの考え方を実践する場合に注意しなければならないことがあります。
それは、フロンティアが、過去のデータによる期待リターンとリスクに基いて計算したものと違う場合があるからです。
したがって、過去のデータを用いた効率的フロンティアは、あくまでも投資決定において利用可能な情報の1つに過ぎない、という認識に立って活用していくことが重要です。

3銘柄以上からなるポートフォリオのリスクと期待リターン

3銘柄以上からなるポートフォリオのリスクと期待リターンはどのようになるでしょう。

AとBに株式Cも含めたポートフォリオの場合を考えてみましょう。

ポートフォリオの期待リターンは、これまでと同様に、3銘柄の期待リターンを投資比率で加重平均したものなります。

数値列としてはCの期待リターン=1%、標準偏差で表したリスク=5%、AとCとの相関係数=0.3%、BとCとの相関係数=0.1%とします。

投資可能領域
図1-8

2銘柄に投資した場合と大きく違う点は、投資選択ポイントが曲線上ではなく、図1-8のような平面的な領域になるということです。

この領域のことを投資可能領域あるいは、合成可能領域、投資機会集合といいいます。

この投資可能領域の任意な点に投資することは可能ですが、どこに投資をすればいいでしょうか?

例えば、ポートフォリオDを投資先として選択する投資家はいるでしょうか?

Dよりも期待リターンが大きくなる方向のポートフォリオまたは、リスクがより小さくなる方向の選択は十分可能であり、合理的な投資家ならDの左上を選択するでしょう。

さいごに

ここでも効率的なフロンティアは右上がりの曲線となっているので、期待リターンをより高くするためには、より大きなリスクを取る必要があることがわかります。

この関係性をリスクとリターンのトレードオフといい、効率的フロンティア上では、リスクとリターンを同時に好ましい方向に変化させることは出来ないという結論に至ります。

次回は、慎重に投資銘柄を選んで分散投資しても避けられないリスクなどについて解説します。

ではまた。

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