分散投資は必要か?

「多くの卵を1つの籠に入れるな」という西洋の格言がある。

投資で云えば、ある特定の銘柄に集中するのではなく、分散するといいという話になる。

これは、多くの銘柄に分散して投資しておけば、ある特定の銘柄のパフォーマンスが悪いときに、他の銘柄のパフォーマスが良いことを前提にした考え方だ。

では、実際に分散や標準偏差という尺度でリスクを測った時、分散投資によってリスクが実際に軽減できるのだろうか?

確率と統計を見る

まず分散によって実際にリスクが軽減できているかを検討してみよう。

  • なぜ分散するとリスクが小さくなるのか?
  • 組み合わせによってリスクをゼロにすることが可能なのか?

上記2点が今回のポイントだ!

リスクがゼロになる場合?

例えば、高値水準にある株式Aと、そうではない株式Bという値上がり幅、値下がり幅が同じ2つの株式があると仮定する。

この場合、株式の変動(ボラティリティ)リスクは同じだ。

また、2つの株のトレンド(傾向)もなく、水平だった場合、変化率、期待リターンも平均的には「ゼロ」になる。

したがって、安値で買って高値で売る、あるいは高値で売って安値で買い戻す。

ある種、タイミング的な戦略がない限り、どちらに投資してもリスクもリターンも同じになる。

ところが、この2つの株式を1株ずつ買うことにより、理論上リスクをゼロにできる可能性がある。

しかし、2つの株式の同じ時点の値上がり益と値下がり益を相殺できる関係が成り立つという前提があっての話だ。

仮にそうなら、ポートフォリオ全体の上下変動を減少させたり、なくしたりもできることになる。

では、統計学の確率論の観点から見た場合はどうだろうか?

まったく逆方向に動き、上下変動幅(ボラティリティ)がまったく同じだと仮定した株式Aと株式Bが存在しすると仮定する。

この2つの株式を等しい金額だけ投資すれば、価格変動リスクは理論上はゼロになる。

一方、完全な逆相関(動き)であっても、変動幅が異なる場合は、投資金額を上手く調整できれば、リスクをゼロにすることは理論上は可能だ。

リスクが変わらない場合?

今度は分散投資してもリスクが変わらない場合を考えてみよう。

例えば、株式B同様、株価にトレンドがなく、ボラティリティ(変動幅)も株式Aと同じ株式Cがあったとする。

この場合、当然、株式Cのリスクも平均リターンも株式Bと同様になる。

ところが、株式Aと株式Bを1株ずつ組み入れたポートフォリオの変化は「分散投資によってリスクがゼロになる」場合とまったく異なる。

分散投資をしたにも関わらず、リスクが減少することなく、変動幅も変わらないという現象が起こる可能性がある。

結論から言えば、株式Cの値動きの方向と幅が株式Aとまったく同じ場合にそのような現象になる。

つまり、同じ方向に動くものに投資すると、分散投資の効果、リスク低減効果は小さくなる。

完全に連動して動く資産に投資してしまうとリスクはまったく軽減できない。

では、実際の株式銘柄はどうだろうか?

互いにプラス相関(同じ方向)を持っている銘柄は多いが、完全な逆相関(反対方向)を持つものがないことがわかる。

つまり、株式のみでポートフォリオを組む限り、リスクをなくすことはできない。

相関関係と共分散?

そう、ポートフォリオのリスクを算出するには、各資産のリスクだけ考えていても始まらない。

その資産間の相関関係を知る必要があるということだ。

金融投資以外の分野でも同じことが言える。

例えば、前回も登場した偏差値がそうだ。

2科目の試験の個人ごとの標準偏差を求めると、単純に標準偏差の和と等しくなるわけではなく、大きくなることも、小さくなることもある。

その現象について、共分散という尺度を用いて表現すると次のようになる。

2つの変数の和の分散=一方の変数の分散+もう一方の変数の分散+2×両方の変数間の分散

ここで、変数をAとし、もう一方をBとし、データの組がN個あると仮定したとき、2つの共分散は次のようになる。

AとBの共分散=1/N{(1組目のAの値-Aの期待値)(1組目のBの値-Bの期待値)+(2組目のAの値-Aの期待値)(2組目のBの値-Bの期待値)+・・・・・(N組目のAの値-Aの期待値)(N組目のBの値-Bの期待値)}

参考事例▼

例えば、株式Aと株式Bがあり、月次のリターンのデータが下記のとおりだとする。

1月2月3月
Aのリターン1%7%10%
Bのリターン1%2%6%

株式Aと株式Bのリターンは次のように算出される。

AとBの共分散=1/3{(1-6)(1-3)+(7-6)(2-3)+(10-6)(6-3)}=1/3{(-5)(-2)+{1}{-1)+(4)(3)}=1/3{10-1+12}=21/3=7

両株のリターンが同じ方向に動く場合、ポートフォリオのリスクが大きくなり、逆方向に働く場合は小さくなる、という効果が確認できる。

しかし、その関連性が強いか弱いかを直ちに把握できるわけではない。

共分散の値がそれぞれのデータの値に依存しているからだ。

だから、各データの標準偏差で基準化した相関係数を算出し直して、相関の強さを把握する必要がある。

相関係数=共分散/一方の標準偏差・もう一方の標準偏差

この相関係数は、常に次式を満たし、その符号は、共分散の符号と一致する。

-1≦相関係数≦1

参考▼

相関係数が正の時、2つの変数には正の相関があるといい、特に相関係数=1のとき、正の完全相関という。

また、相関係数が負の時、負の相関があるといい、特に相関係数=-1のときは、負の完全相関とう。

※相関係数=0は無相関

2銘柄のポートフォリオのリスクと期待リターン

互いに完全に同じ方向に動かないものに等しく投資した場合、ポートフォリオ全体のリスクは減少する。

そして、完全に同じ方向に動くものに投資すると、リスクはまったく減らない。

では、2つの株式が完全に相関していない時、あるいは均等に投資していない時のポートフォリオのリスクはどうだろうか?

※ポートフォリオリスク=(株式Aの投資比率)×株式Aのリスク+(株式Bの投資比率)×株式Bのリスク+(2×株式Aの投資比率×株式Bの投資比率×株式Aのリスク×株式Bのリスク×株式Aと株式Bの間の相関係数

参考事例▼

例えば、2つの株式があり、それぞれの期待リターン、リスク、相関係数が以下のようなケースを考えてみよう。

株式A株式B
期待リターン4%10%
リスク(標準偏差)10%15%
相関係数-0.6%
投資比率40%60%

上記の場合、ポートフォリオの期待リターンは2つの株式の期待リターンを投資比率(0.4,0.6)で加重平均することによって求められ、その値は7.6%になる。

そして、上記の計算式にあてはめて計算した結果、ポートフォリオのリスクは7.3%ということが確認できる。

上記の数値列は投資金額が、それぞれ4割と6割だがポートフォリオのリスクはこの投資比率によって変わる。

例えば、株式Bの投資比率を0%から10%刻みで増やし、同時に株式Aの投資比率を100%から10%刻みで減らしていくとしよう。

どのように変化していくだろうか?

効率的フロンティア

図1-7

図1-7は2銘柄からなるポートフォリオの期待リターンとリスクの関係を示したものだ。

この曲線が、個人投資家や家計において意味するものは何か?

点Bは、投資家が株式Bにのみ投資した状態を示している。

ピンクの点MVは投資家がポートフォリオのリスクを最小にする選択をした状態を示している。

点MVから点Aの曲線で示される投資選択は、他の場合と比べて劣っていることがわかる。

例えば、点Aは株式Aのみに投資していることを示している。

点Aのリスクが10%で、リターンが4%であるのに対し、株式Aに25%とBに75%の投資をしたポートフォリオのリスクもほぼ同じになる。

しかし、株式Aに25%とBに75%の投資をしたポートフォリオの期待リターンは、Aのみに投資した場合よりも高くなる。

どういうことかというと、点MVから点Aの曲線で示されるポートフォリオよりも、点MVから点Bの曲線で示されるポートフォリオの方が期待リターンとリスクの両方の観点からみて優位であることが確認できる。

この点MVから点Bまでの曲線のことを「効率的フロンティア」と呼んでいる。

では、この「効率的フロンティア」のどこを選択すれば、ベターな結果を得られるだろう。

まず言えることは、特定の1点に決めることは出来ないということだ。

例えば、高いリターンを期待する投資家はできる限り点Bに近いポートフォリオを選択する。

一方、リスクを嫌う投資家はできる限り点MVに近い点のポートフォリオを選択する。

このように、最終的には、投資家のリスクとリターンの尺度に応じて選択が行われる。

また、効率的フロンティアを実践する際に注意して欲しいことがある。

効率的フロンティアとは言え、それは過去のデータに過ぎないということだ。

3銘柄以上からなるポートフォリオのリスクと期待リターン

今度は、3銘柄以上からなるポートフォリオのリスクと期待リターンについて検討してみよう。

同じように、このポートフォリオの期待リターンは、3銘柄の期待リターンを投資比率で加重平均したものになる。

例えば、Cの期待リターン=1%、標準偏差で表したリスク=5%、AとCとの相関係数=0.3%、BとCとの相関係数=0.1%と仮定する。

投資可能領域

図1-8

この時、2銘柄に投資した場合と大きく異なる点は、投資選択ポイントが曲線上ではなく、図1-8のような平面的な領域になる。

この領域のことを投資可能領域、あるいは合成可能領域、投資機会集合という言い方をする。

この投資可能領域の任意な点に投資することは可能だが、どこに投資すればいいだろう。

例えば、ポートフォリオDを投資先として選択する投資家はいるだろうか?

この図からもDよりも期待リターンが大きくなる方向のポートフォリオ、またはリスクがより小さくなる方向の選択が十分可能なことがわかる。

したがって、合理的な投資家ならDの左上を選択する。

ここでも効率的なフロンティアは右上がりの曲線となるので、期待リターンをより高くするためには、より大きなリスクを取る必要がある。

この関係性をリスクとリターンのトレードオフと呼んでいる。

つまり、効率的フロンティア上では、リスクとリターンを同時に好ましい方向に変化させることは出来ない。

そのような結論に至る。

次回は、慎重に投資銘柄を選んで分散投資しても避けられないリスクなどについて解説します。

ではまた。CFP® Masao Saiki

※日本FP協会 CFP教育カリキュラムに基づき作成しています。

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