
法人を設立する目的はなんだろう?
制約や抑圧が軽減された環境を作って所得を増やす。
という目的なら、個人事業主のままでも十分だろう。
例えば、法人化には企業価値を高める、という効果も期待できる。
債権者に利息を払い、株主に満足する利益をもたらせば価値は高まる。
では企業価値とはなんだろう?
企業価値とは?
企業価値をファイナンスの一点から視た場合、事業から生み出す将来キャッシュフローを、一定の割引率で割り引いた現在価値という理屈になる。
コーポレートファイナンスの分野では、DCF(キャッシュフロー割引)モデルとか、フリーキャッシュフロー・バリエーションなどと呼ばれている。
これは人的資本や金融資産の評価にも共通している考え方だ。
割引率?
人的資本の場合は、個人が将来得られると予測されるキャッシュフローの期待収益率になる。
企業の場合は、企業が将来得るであろうキャッシュフローの必要収益率に該当する。
必要収益率?
- 資金提供者である株主が要求する配当などのリターン。
- 債権者が要求する利子を支払うもとになる利益。
上記2つが、必要収益率だ。
コーポレートファイナンスでは、この必要収益率のことを資本コストと呼んでいる。
資本コスト?
資本コストとは、、、、、
- 材料費や販売費・一般管理費といった会計上のコスト。
- 資本金と借入金・債券などを使用する資本使用のコスト。
上記の2種があり、これらをカバーする利益が得られて初めて企業価値を高める事ができる。
株主は毎月の配当と所有株の値上がり益の両方を期待するだろうし、債権者は利息の支払いと早期の元本回収を求めるだろう。
企業はこうした両者の収益を最低限上回る利益を生み出すことを求められていることになる。
法人を設立する。
それは、こうした仕組みを組み込むことを意味するのだ。
企業が生み出す将来キャッシュフローとは?
では、企業が生み出す将来キャッシュフローとはなんだろう?
ズバリ、事業から生み出す営業キャッシュフローを意味する。
商品の販売やサービスの提供など、会社が日々の営業活動から得たキャッシュ量を示している。
その会社はいくらのキャッシュを1年間で生み出せるのか?
つまり、その能力を表す基準になる数値(データ)だ。
これが、キャッシュフローで最も重要な項目になる。
投資キャッシュフロー
そこから投資キャッシュフローを引く。
投資キャッシュフローとは運転資金や設備投資のことだ。
残ったものがフリーキャッシュフローだ。
このフリーキャッシュフローを必要収益率(資本コスト)で割り引いた数値が、その企業の現在の企業価値になる。
ちなみに、これを発行株式数で割ると1株あたりの理論株価になる。
あなたの会社は大丈夫!?
かって企業が地価上昇による含み益経営をしていた時期があった。
上昇を前提に時価と簿価との差額である含み益を担保に銀行からバンバン借入をし、それを設備投資や人材教育に充当し、事業を拡大していた時代のことだ。
そして、株主への配当よりも内部留保を優先してきた。
バブル期になると地価や株式の上昇に伴なって土地や株式の切り売りも頻繁に行われた。
こうした含み益によって、売掛金の増加や在庫過多が軽視されていた。
そして、会計上は黒字でもフリーキャッシュフローがない。
あるいはマイナスの会社がたくさん存在するようになった。
さらに、事業を維持するために株の持ち合いなど、投資キャッシュフロー手段が加わっていった。
ついに、多くの会社のフリーキャッシュフローが、どんどん減少していったのだった。
かつての含み益時代はとうの昔に終わり、今はフリーキャッシュフローの増大により企業価値を高める方法が一般化してきている。
こうした基準への移行は、企業が新たな事業に投資するかどうかの判断基準になると同時に、資本構成や配当対策を講じる上でも有効基準になる。
付録:LLPとLLCについて。
ではまた。