キャロル・ギリガンの視点から見る男性性と女性性の統合と成長

個人の成長と発展は、多くの要因によって影響を受けます。これには、社会的な価値観、性格のタイプ、そしてもちろん、性別も含まれます。

キャロル・ギリガンは、男性と女性が異なる段階と論理を通じて成長するという視点を持っています。

この記事では、ギリガンの考えを詳しく解説します。

キャロル・ギリガンは、男性も女性も3つか4つの主要な倫理的発達段階を経て成長する傾向にあると述べています。

これらの段階は次のようになります。

  1. 前-慣習段階:この段階では、個人は自己中心的です。
  2. 慣習段階:個人のアイデンティティは拡大し、自分の所属するグループの他の人を含むようになります。これは伝統的で、体制順応的です。
  3. 後-慣習段階:アイデンティティは「私たち」から「一切衆生」に拡大します。これは世界中心的です。
  4. 統合段階:この段階では、あらゆる信条を超え、すべての人間に対して思いやりや同情の心を抱くようになります。

女性の異なる論理

ギリガンは、女性はこれらの段階を異なるタイプの論理で通過すると主張しています。彼女は、男性の論理は自主性、正義、権利に基づく傾向があるのに対し、女性の論理は関係性、思いやり、責任感に基づく傾向があると述べています。

たとえば、彼女はある話を紹介しています。小さな男の子と女の子が遊んでいる時、男の子は「海賊ごっこ」をしたがるが、女の子は「お隣さんごっこ」をしたがる。最終的に、女の子が「お隣同士に住んでいる海賊ごっこ」を提案することで、双方の遊びを組み合わせる。

さらなる例として、野球の試合で男の子が三振して泣き出した場合、他の男の子たちは何もしないかもしれません。なぜなら、規則は規則だからです。しかし、女の子がいれば、「もう一度挑戦させてあげて」と言うかもしれません。

これは、男性が規則を維持することを重視する一方で、女性は感情を傷つけないようにすることを重視することを示しています。

最終的な到達点:統合段階

ギリガンは第4段階、統合段階を倫理の最高次の段階としています。この段階では、個人の中の男性の声と女性の声が統合されると彼女は述べています。しかし、これは性別が中性になるわけではありません。むしろ、男性性と女性性の次元が強化されると彼女は主張します。

統合段階では、個人が関係性と独立性、思いやりと正義、責任感と規則を組み合わせる能力が向上します。これは個人が、自分自身と他人との関係でより寛容で理解が深まり、バランスのとれた自己を持つことを可能にします。

キャロル・ギリガンの理論は、男性と女性の成長プロセスの違いを強調し、これらの違いがどのようにして個人の倫理観や価値観を形成するのかを示しています。最終的な統合段階では、男性性と女性性の両方を理解し、尊重し、統合することが重要となります。これにより、個人はより豊かでバランスのとれた生活を送り、自分自身と他人との関係を深めることができるのです。

ウイルバーが示す概念

ウィルバーは、男性性と女性性にも基本的な概念があると言及しています。そして、これらはタイプ(類型)であり、どの発展段階にも存在すると説明しています。これは、男性性や女性性といった特性が、発展の過程で変化し得るものではなく、個人の性格や行動の基本的な側面として存在し続けることを意味します。

これはMBTI(マイヤーズ・ブリッグス・タイプ指標)と関連しています。MBTIは、人々が互いに異なる性格タイプを持っており、これらのタイプが互いに尊重されるべきであるという考えに基づいています。これは、内向と外向、感覚と直観、思考と感情、判断と知覚の4つの指標によって性格を分類する方法です。

ウィルバーが指摘するように、これらの「水平的な類型論」は、発展の段階、ライン、または状態と結びつけられることで、非常に有用となります。つまり、人々の発展のプロセスは、性格のタイプとともに考慮されるべきであり、これによって人々の理解が深まるということです。

男性性と女性性の概念を考慮する場合、これらは特定のタイプの性質を示していますが、それらは発展的な段階によって異なる表現を持つかもしれません。例えば、男性性がより競争的であるとされている場合、その競争心は個人が発展するにつれて、自分自身の利益のためだけでなく、コミュニティや社会全体の利益のために使用されるかもしれません。

同様に、女性性が共感やケアを強調するとされている場合、これらの特性は、個人が発展するにつれて、家族や友人だけでなく、広いコミュニティや世界全体に対して展開されるかもしれません。

これらの概念は、個人がどのように成長し、発展するかを理解する上で重要な役割を果たします。そして、これはウィルバーとギリガンの議論が重なる部分であり、発展的段階と個人の性格や性別に関連する特性との関連性を理解する上で、非常に洞察に富んだアプローチを提供しています。

ではまた。

MBTI:ユングの心理学的類型論(Psychological Types)をもとに、1962年に米国のブリックス(Briggs,K)とマイヤーズ(Myers,I)によって研究開発された、人と人との違いを知ってお互いに尊重しあうことを目的に作られた、類型論に基づいた、自己理解メソッド。ユングの類型論(タイプ論)の指標(内向:I‐外向:E、感覚:S-直観:N、思考:T‐感情:F)に、判断的態度:Jと知覚的態度:Pという独自の指標を加えて、4指標16タイプで性格を考える。ーWikipedia

キャロル・ギリガン(Carol Gilligan, 1937年11月28日  ):アメリカ合衆国のフェミニストで倫理学者、そして心理学者で、ローレンス・コールバーグとともに倫理的なコミュニティや倫理的社会についてともに仕事し、また彼を批判したこと、倫理学における主体-客体問題でよく知られている。ーWikipedia

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