小規模宅地などの相続税の課税価格の計算の特例

小規模宅地などの相続税の課税価格の計算の特例

主な財産が自宅や事業用資産であり、多額の相続税がかかるため、その自宅や事業用店舗の敷地を売却しなくてはならない。

そのような事態を回避するために設けられているのが小規模宅地などについての特例規定です。

特例の概要(措法69の4)

  • 居住用宅地・事業用宅地・不動産貸付用宅地などのうち200㎡
  • 特定事業用など宅地など・特定同族会社事業用宅地などについては400㎡
  • 特定居住用宅地などについては330㎡(平成26年12月31日までに相続が開始した場合は240m2))

被相続人または被相続人と生計を一にする親族の上記の部分については、通常評価額から一定割合を減額することができます。

特例適用対象宅地、その減額割合、減額となる宅地の地積

申告期限までの事業・居住継続の有無 限度面積 減額割合
事業 継続 400㎡ 80%
非継続 適用除外
事業貸付用 継続 200㎡ 50%
非継続 適用除外
居住用 継続 330㎡ 80%
非継続 適用除外
注意点▼
  • 相続人などが相続税の申告期限まで事業または居住を継続しない宅地などは適用対象から除外する。
  • 一の宅地などについて共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件を判定する。
  • 一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地などのうちに特定居住用宅地などの要件に該当する部分とそれ以外の部分がある場合には、部分ごとに按分して減額割合を計算する。

つまり、被相続人などが相続発生直前まで「居住用」または「事業用」もしくは「不動産貸付用」に供していたことが必要であり、相続したものが利用要件を満たしている場合のみ、減額を受けられます。

特例適用該当要件について

  1. 被相続人の所有していた一定の建物または構築物の敷地の用に供されている宅地など
  2. 相続開始前の利用状況が、被相続人の事業用(準事業注含む)、同一生計親族の事業用(準事業注含む)、被相続人の居住用、同一生計親族の居住用、国の事業用、のいずれかに該当すること。
注意点▼

事業と称するに至らない不動産の貸付その他これに類する行為で相当の対価を得て継続的に行うもの(措令40の2)。

減額割合について

特定居住用宅地など

被相続人要件と相続人要件をともに満たす宅地で、80%減額となる居住用宅地。

特定事業用宅地などまたは特定同族会社事業用宅地など

被相続人要件と相続人要件をともに満たす宅地で、80%減額となる事業用宅地。

※不動産貸付用宅地などについて特例適用を受ける場合は、50%減額にとどまります。

減額となる地積について

居住用宅地・事業用宅地・不動産貸付用宅地それぞれについて限度面積まで減額が適用できるわけではありません。

例えば、相続財産のなかに自宅の敷地330㎡と不動産貸付用宅地200㎡がある場合を考えてみましょう。

これらの宅地のうち相続人などが選択した宅地などについてこの特例の適用を受けることができます。

つまり、適用を受ける宅地の選択は納税者が行うので、減額金額が大きくなるよう選択する必要があるでしょう。

また、特定事業用宅地など・特定同族会社事業用宅地などおよび特定居住用宅地などの減額対象宅地についてですが、、

特定事業用宅地など・特定同族会社事業用宅地などについては400㎡、特定居住用宅地などについては330㎡が限度となります。

したがって、特定事業用宅地など・特定同族会社事業用宅地など、特定居住用宅地などおよび特例の適用が可能なその他の宅地が存在する場合は、400㎡、330㎡、200㎡の間で減額対象宅地を調整する必要があります。

2つ以上の種類の宅地などがある場合

小規模宅地などについての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受ける場合、地積の限度は以下のとおりです。

特定居住用宅地などAまたは特定事業用宅地などB・特定同族会社事業用宅地などCを選択する場合

A≦330㎡またはB+C≦400㎡であること。

つまり、適用最大地積は合計で730㎡ということになります。

貸付事業用宅地などDおよびそれ以外の宅地など(A,BまたはC)を選択する場合

A×200/330+(B+C)×200/400+D≦200㎡であること。

つまり、Dを選択することによりA,BまたはCの地積も制限を受ける可能性があるということです。

特定事業用宅地など(措法69の4③―)

特定同族会社事業用宅地などと合せて400㎡を限度として80%減額になります。

ただし、次に掲げる要件のいずれかを満たす必要があります。

被相続人の事業用宅地(不動産貸付業などを除く)

  1. 被相続人の親族が、相続税の申告期限までに事業を引き継ぎ
  2. 相続税の申告期限まで引き続き当該宅地などを所有
  3. かつその事業を営んでいる。

上記1~3の要件を満たす場合は、相続発生後に被相続人の事業を承継することができます。

被相続人と生計を一にしていた親族の事業用宅地(不動産貸付業などを除く)

  1. 相続開始前からその宅地で事業を営んでいた被相続人と生計を一にしていた親族
  2. 相続税の申告期限まで引き続きその宅地を所有
  3. かつ、相続開始前から申告期限までその事業を営んでいる。

上記1~3の要件を満たす場合は、相続発生後に被相続人の事業を承継することができます。

特定居住用宅地など(措法69の4③二)

被相続人などの居住の用に供されていた宅地などで、被相続人の配偶者または一定の要件を満たす被相続人の親族が取得したものは、330㎡を限度として80%減額になります。

一定要件とは

  1. その宅地に被相続人と同居(単身赴任でも生活の拠点ということで判定)していた親族が、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き所有し、かつ居住し続ける。
  2. 被相続人の配偶者および同居相続人(法定相続人=放棄があった場合には放棄がないものとした場合の相続人)がなく、かつ、相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者の持ち家に居住したことがない親族が、被相続人の居住の用に供されていた宅地などを取得し、かつ、相続開始時から相続税の申告期限まで引き続き所有し続ける。
  3. 被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地について、相続税の申告期限まで引き続き所有し、相続開始時から申告期限まで居住し続ける。

なお、平成26年1月1日から次のように緩和されています。

一棟の二世帯住宅で構造上区分のあるもの

被相続人およびその親族が各独立部分に居住していた場合には、その親族が相続または遺贈により取得したその敷地の用に供されていた宅地などのうち、被相続人およびその親族が居住していた部分に対応する部分を特例の対象とする。

老人ホームに入居したことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋の敷地の用に供されていた宅地

  1. 被相続人に介護が必要のため入所したものであること。
  2. その家屋が貸付の用途に供されていないこと。

上記の要件が満たされている場合に限り、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものとして特定居住用宅地などの対象になります。

貸付事業用宅地など(措法69の4③四)

一定の要件を満たす親族が取得したもの(特定同族会社事業用宅地などを除く)は、貸付事業用宅地などとして、200㎡を限度として50%が減額になります。

一定の要件とは

被相続人の貸付事業用宅地

被相続人の親族が申告期限までの間に貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続きその宅地などを有し、かつ、貸付事業の用に供していること。

被相続人と生計を一にしていた親族の貸付事業用宅地

被相続人と生計を一にしていた親族が、申告期限まで当該宅地などを有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き、その親族の貸付事業の用に供していること。

次回は「特定同族会社事業用宅地などの主な要件(措法69の4③三)」についてからです。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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