解雇寸前の生保セールスマン──「趣味」を入口に、自分の軸を取り戻したケース

対話と気づきのケースファイル

解雇寸前だった営業マンが、「自分の軸」を取り戻すまで

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※ 医療的診断ではありません。セルフケアの参考情報としてご活用ください。

ここでご紹介するのは、まだ Pathos Fores Design という名前もコンセプトも生まれていなかった頃の、ある一人の男性とのケースです。いま振り返ってみると、「人はどのように変わっていくのか」「対話は何を支えているのか」という PFD の原型のような要素が、すでにこの時点から顔を出していました。

ケースの背景──「お客さん」だった彼が、営業マンとして戻ってきた

彼との最初の出会いは、平成18年。私が生命保険のセールスとして活動していたころのことです。当時の彼は、どこにでもいる普通の会社員で、「保険の見直しをしたい」と相談に来られたお客さんの一人でした。

それから年月が経ち、再び連絡をもらったのが平成26年。久しぶりに会ってみると、今度は彼自身が某生命保険会社のセールスマンとして働いていました。

ところが、状況はかなり切羽詰まったものでした。

「入社して2カ月になるんですが、まったく契約が取れません。このままだと、解雇されるかもしれないんです…」

そう言って、彼は相談に来たのです。

初回の対話──「考えが甘い」と感じた違和感

詳しく話を聞いていくと、正直なところ、最初の印象はあまりよいものではありませんでした。営業の世界をまだ理解しきれていない、成果に対する覚悟が足りない、自分の状況をどこか他人事のように語る──そんな「考えの甘さ」が随所に見え隠れしていたからです。

このままでは、いくらテクニックやノウハウを教えたところで、うまくいかないだろう。そう感じた私は、一度はお断りしようかと思いました。

ところが、会話の途中で話題が「趣味」に移った瞬間、彼の表情と声のトーンがガラリと変わりました。平成18年に初めて会ったときと同じ、あのときの熱量が、そのままそこにあったのです。

その変化を見たとき、ふと「ひょっとしたら」と思いました。仕事の話になると急に弱気になる彼と、好きなことを語るときの彼は、まるで別人です。このギャップの中に、何か開くべき扉があるのではないか──そう感じて、私の好奇心の方が動き出しました。

こうして私は、彼のコンサルティングを引き受けることにしたのです。

迷走から始まったプロセス──「行動に移せない」壁

案の定、最初のうちは、ものすごく手間がかかりました。こちらが提案した行動プランは、理解したように見えても、なかなか実行に移されません。優先順位がぶれる、やるべきことを後回しにする、自分でも理由が分からないまま時間だけが過ぎていく──。

一言で言えば「迷走」。そして、時折見せる的外れな反応に、こちらが翻弄されそうになる場面もありました。

通常であれば、ここまで手間がかかるクライアントはあまり多くありません。彼がきちんと自分の足で行動できるようになるまでには、標準的なケースの倍近い時間がかかったと思います。

正直に言えば、私自身、途中で何度か「もうやめてしまおうか」と感じました。それでも踏みとどまることができたのは、趣味の話をしているときの、あの生き生きとした表情が、どうしても忘れられなかったからです。

「この人は、本質的には行動力がないわけじゃない。ただ、その力をどこに向ければいいのか、まだ自分で分かっていないだけだ」──そう信じて、根性を出して伴走を続けました。

変化の兆し──「好きなこと」と「仕事」がつながった瞬間

転機になったのは、彼の「趣味」と「営業のスタイル」とを結びつける視点が生まれたときでした。詳しい内容はプライバシーにかかわるためここでは書けませんが、要するに、彼が本当に好きで、深く語れるテーマを、営業の場での「入り口」として使うようになったのです。

それまでは、「売らなければならない」「数字を上げなければならない」というプレッシャーの中で、彼は自分を小さく見せたり、相手に迎合したりしていました。ところが、自分が本当に大切にしている世界観から話し始めることで、自然と姿勢が変わっていきます。

・目の前の相手を「お客さん」ではなく、「同じテーマを共有できる人」として見るようになったこと。
・自分が心から信じていることだけを言葉にしようと決めたこと。
・そのうえで、保険という商品を「安心の形」に翻訳して提案し始めたこと。

こうした小さな変化が積み重なった結果、彼の行動はようやく「自分の軸」とつながり始めました。

そこからの伸びは、早かったと言っていいでしょう。行動量が増えただけでなく、出会う人との関係性の質そのものが変わり、営業成績も安定して上位に入るようになっていきました。

別人のような変化──外見は触っていないのに、ファッションまで変わった

久しぶりに再会したとき、彼はまるで別人のようになっていました。姿勢、表情、話し方。どれも以前よりずっと落ち着きと自信があり、「自分のスタイル」を身につけた人特有の佇まいになっていたのです。

面白いことに、ファッションまで変わっていました。私自身は元ファッションデザイナーですが、彼に服装のアドバイスをしたことは一度もありません。それにもかかわらず、彼はいつの間にか、自分に似合う色やシルエットを自然と選べるようになっていました。

内側の軸が立ち始めると、人は外側の身だしなみや振る舞いまで変わっていく──このときの彼の変化は、そのことをあらためて教えてくれたように思います。

営業成績はトップクラスとなり、やがて彼は、自分で事業を立ち上げることも視野に入れ始めました。解雇寸前だった頃からは想像もできなかった未来です。

※上記はあくまでも一つの事例であり、すべての方に同様の成果や効果を保証するものではありません。

20年後のあとがき──「人は変わる」のではなく、「本来の自分に戻る」

このケースは、Pathos Fores Design という概念が形になるずっと前の出来事ですが、今振り返ってみると、すでに PFD の核となるいくつかの要素が含まれていました。

  • 数字やノルマの前に、「その人が本当に大切にしている世界観」を見に行くこと。
  • 行動できない人を責めるのではなく、「行動のエネルギー源」と「行動の方向」がつながっていないギャップを探ること。
  • 外側のスキルよりも先に、「自分の軸」に光を当てること。

当時の私は、そこまで体系化していたわけではありません。ただ、「この人の中には、まだ言語化されていない力が眠っている」と感じ、その力に賭けてみた、というのが正直なところです。

今の言葉で言うなら、彼は「変わった」のではなく、

もともと持っていた感性やエネルギーが、仕事という文脈にうまく接続されることで、「本来の自分」に少しずつ戻っていった──そう表現した方が近いかもしれません。

あなたへの問いかけ──「考えの甘さ」の奥にある、本当のテーマは何か

このケースは、一人の営業マンの物語であると同時に、「自分の軸が見えなくなっているとき、人はどのように迷うのか」を映し出した一つの鏡でもあります。

もし今、あなた自身が

  • やるべきことは分かっているのに、どうしても行動に移せない
  • 周囲から「考えが甘い」と言われてしまう
  • 仕事の場では自信が持てないのに、好きなことを語るときだけは別人になる

そんな感覚を少しでも抱えているとしたら、その奥には、まだ言葉になっていない「本当のテーマ」が眠っているのかもしれません。

それは、能力や根性の問題ではなく、

「自分の感性」と「選んでいる生き方」とのあいだに、どんなズレがあるのかを一緒に確かめていくプロセスです。

Pathos Fores Design は、こうしたケースファイルの積み重ねの上に生まれたコンセプトです。もし、あなた自身の「対話と気づきのケースファイル」を開いてみたいと感じたときは、どうぞ一度、ご相談ください。

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