「博士号を取りに行くつもりでした」──アメリカ留学プランから、資産10億の起業家へと舵を切るまで
このケースは、もともと「今の職場を辞めてアメリカに留学し、博士号を取得したい」というご相談から始まりました。ところが数年後、その彼はまったく別の道を歩みながら、働く時間を十分の一に減らし、資産規模を一桁どころか二桁変化させていきます。数字だけを切り取れば劇的な変化の物語にも見えますが、その裏側にあるのは、「自分がどこで才能を使いたいのか」「どんなリスクなら引き受けられるのか」を静かに問い直していく、地味で現実的なプロセスでした。

ケースの背景──「アメリカで博士号を取りたい」という依頼から始まった

彼が私のもとを訪ねてきたのは、2012年8月のことです。

「今の職場を辞めて、アメリカに留学し、博士号を取得したい。そのための計画を一緒に作ってほしい。」

という依頼でした。テーマは、キャリアの再設計と資金計画、そして留学中・帰国後のライフプランです。ファイナンス理論を研究してきたバックグラウンドを持つ彼にとって、博士号の取得は自然な延長線上の選択に見えました。

2度目のセッションの頃には、私は彼の中にある「分析力」「構造を組み立てる力」「リスクを読み解くセンス」に気づき始めていました。そこで、一度こう尋ねてみました。

「独立して起業する気はありませんか?」

彼の答えは明快でした。

「今のところ、その気はありません。」

そこで私は、無理に方向転換を迫ることはせず、当初の依頼どおり、アメリカ留学と博士号取得を前提としたプランニングを進めていくことにしました。

半年後の「音信不通」と、4カ月後の「腑に落ちました」という連絡

留学に向けた資金計画やタイムラインを一通り描き終え、あとは実行を支えるフェーズに入ろうとした頃、彼はセッションに来なくなりました。およそ半年ほど経った時点で、連絡は途絶え、音信不通に近い状態となりました。

「何かあったのではないか」「プランに無理があったのではないか」と心配もしましたが、こちらから無理に連絡を追いかけることはせず、一旦そのまま様子を見ることにしました。

そこから4カ月ほど経って、久しぶりに彼から連絡が入りました。

「あのとき斉木さんが言っていたことが、ようやく腑に落ちました。もう一度、コンサルテーションをお願いしたいのですが。」

どうやら、時間を置くことで、自分の中で何を本当に選びたいのかが少しずつ見えてきたようでした。こうして、二度目のフェーズとしてのコンサルテーションが再開しました。

労働時間は10分の1、年収は1.7倍──「働き方」と「お金の仕組み」を組み替える

再開後のセッションでは、留学プラン一本だった議題が、少しずつ変化していきました。

  • 自分が本当に力を発揮できるのは、どんなフィールドか
  • 他人の枠組みの中で価値を提供するのか、自分で枠組みを設計するのか
  • どの程度のリスクなら、自分の中で納得して引き受けられるのか

こうした問いを重ねていく中で、彼の選択肢は、「博士号+企業内キャリア」から、「理論と実務を結ぶ形での起業・投資」へと、静かにシフトしていきました。

そこから約6カ月後、彼の労働時間は以前の10分の1になりました。単純にサボったわけではなく、

  • 自分が担うべき仕事と、手放すべき仕事を切り分ける
  • レバレッジの効く仕組みに時間を投じる
  • 「時間を切り売りする働き方」から脱却する

という設計を進めた結果として、物理的な労働時間が大幅に減ったのです。

さらにその3カ月後、彼の年収は1.7倍になっていました。働く時間を減らしつつ、収入の土台はむしろ分厚くなっていく。ここで初めて、机上のファイナンス理論と、自分自身の現実が結びつき始めたと言えます。

資産10億超へ──ファイナンス理論を「自分の物語」に適用する

その後も彼は、ファイナンス理論を単なる机上の学問としてではなく、自分の資産設計と事業構築に応用していきました。2015年7月時点で、彼の保有する資産は10億円を超える規模にまで成長していました。

もちろん、これは一つの極端なケースですし、誰もが同じ結果を出せるという話ではありません。ただ、ここで強調しておきたいのは、

  • 彼が理論そのものに特別な「魔法」を見たわけではないこと
  • あくまで、自分が理解し納得できる枠組みを、自身の意思決定に一貫して適用し続けたこと
  • 「どれだけ増やしたいか」よりも、「どのようなリスクなら引き受けたいか」を軸にしていたこと

といった点です。ファイナンス理論を超一流の大学院で研究してきたことは大きなアドバンテージでしたが、それを「自分の物語」に落とし込めたかどうかが、最も重要な分岐点だったように感じます。

彼の目標は、「とりあえず10年後に資産100億」というものでした。横展(ヨコテン)、つまり視点を他の領域に広げていくことができれば、10年もかからないかもしれない──そんな可能性も感じさせる状況でしたが、そこでも彼は「どこまでを自分の責任として引き受けるか」という感覚を大切にしていました。

※上記はあくまでも一つの事例であり、絶対的な成果や効果を保証するものではありません。

あなたへの問いかけ──「理論」と「現実」をつなぐ橋を、どこに架けますか

このケースは、一人のクライアントの資産形成の物語でありながら、同時に次のような問いを投げかけてきます。

  • 自分が学んできた知識や理論は、今の暮らしや働き方のどこに反映されているだろうか。
  • 「こう生きるべきだ」という外側のロールモデルに合わせるのではなく、「自分はどこで才能を使いたいのか」を、きちんと聞いたことがあっただろうか。
  • いま選ぼうとしている道は、「頭で正しそうな選択」なのか、「心と現実の両方が納得できる選択」なのか。

もし今、あなたが

  • 専門知識やスキルを持ちながら、それをどう活かすか迷っている
  • 留学や転職、起業など、大きな分岐点に立っている
  • お金やキャリアの計画が、「誰かのモデル」に寄りすぎている気がしている

そんな感覚を抱いているとしたら、一度立ち止まって、

「理論」と「現実」をつなぐ橋を、自分はどこに架けたいのか

という問いを置いてみてもいいかもしれません。

数字や理論だけでなく、「その選択をする自分の物語」まで含めて、プランを描いていく対話を大切にしましょう。

もし、自分の次の10年を少し違う角度から設計し直してみたいと感じたときは、どうぞ一度ご相談ください。

暮らしの輪郭を、内側から描きなおす

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