納税義務者と非課税財産について

納税義務者と非課税財産

相続税は納税義務者によって、課税範囲が異なり、計算方法もこれに応じて定められています。

また、課税価格は財産を取得した者ごとに、その取得した財産の価額を基礎として計算します。

納税義務者の定義は以下の3つになります

  1. 無制限納税義務者
  2. 制限納税義務者
  3. 特定納税義務者

1,無制限納税義務者

まず初めに無制限納税義務者についてです。

無制限納税義務者の課税価格は、相続または遺贈によって取得した財産の価額です。

相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により取得した財産(贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産および相続時精算課税制度の適用を受ける財産を除く)があるときは、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算し、その加算後の金額が相続税の課税価格とされます(相法19①)。

被相続人が特定贈与者である場合

被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産の価額合計額から、被相続人より承継した債務の金額および負担した葬式費用の金額を控除した価格になります(相法11の2①、12~14、21の15~18)。

2,制限納税義務者

制限納税義務者の課税価格は、相続または遺贈によって取得した法施行地にある財産の価額です。

無制限納税義務者同様に相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により取得した財産(贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産および相続時精算課税制度の適用を受ける財産を除く)があるときは、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算し、その加算後の金額が相続税の課税価格とされます(相法19①)。

被相続人が特定贈与者である場合

被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産の価額(贈与時の価額)合計額から、被相続人より承継した債務の金額で法施行地にある財産に関連するものの金額を控除して計算します(相法11の2②、12~14)。

3,特定納税義務者

特定納税義務者の課税価格は、特定贈与者である被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税の適用を受ける財産を、その被相続人から相続(相続時精算課税適用者がその被相続人の相続入以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなし、その財産の価額(贈与時の価額)から、債務控除した後の金額が相続税の課税価格とされます(相法21の16①、相令5の4)。

また、相続開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により取得した財産(贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産および相続時精算課税制度の適用を受ける財産を除く)があるときは、その贈与財産の贈与時の価額を相続税の課税価格に加算し、その加算後の金額が相続税の課税価格とされます(相法19①)。

非課税財産について

相続税法では、非課税財産とされているものがあります。

参考▼

相続または遺贈により取得した財産(本来の相続財産およびみなし相続財産)であっても公益性、社会政策的見地または国民感情などの点から、明文の規定により「相続税の課税価格に算入しない」(本目法12①)

これを相続税の非課税財産として相続税を課さないことにしているのです。

非課税財産とされているものには例えば下記のようなものがあります。

非課税財産の内容
1 皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣が受けた物 (相法12①一)
2 墓所、霊びょうおよび祭具並びにこれらに準ずるもの (相法12①二)
3 公益事業を行う者が取得した公益事業用財産 (相法12①三)
4 条例による心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権 (相法12①四)
5 相続人が取得した生命保険金などのうち一定の金額 (相法12①五)
6 相続人が取得した退職手当金などのうち一定の金額 (相法12①六)
7 国、地方公共団体または特定の公益社団法人などに贈与(寄附)した財産 (措法70①)
8 特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭 (措法703)

上記の内5番以降を少し詳しくみてみることにしましょう。

相続人が取得した生命保険金などのうち一定の金額(5番目)

被相続人の死亡により相続人または相続人以外の者が取得した生命保険金など

被相続人が負担した保険料に対応する部分は、相続または遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となります(相法3①一)。

しかし、相続人が取得した金額のうち一定金額は非課税扱いになります。

※相続人が取得した保険金に限られ、この相続人は民法上の相続人。

保険金が非課税となる場合

すべての相続人の取得した保険金の合計額が、保険金の非課税限度額(=500万円×法定相続人の数)以下の場合は全額が非課税扱いになろます。

保険金の非課税限度額をこえる場合には、次の算式により算出した保険金の金額が各相続人の非課税の額になります。

※生命保険金などの非課税限度額×その相続人が取得した生命保険金などの額/すべての相続人が取得した生命保険金などの合計額

被相続人に養子がある場合の制限

実子がある場合は養子のうち1人まで。

実子がいない場合は養子のうち2人までを法定相続人の数に含めることができます。

ただし、相続税の税負担を不当に減少させると認められる養子は法定相続人の数から除外されます(相法63)。

被相続人の養子でも以下のような場合は、実子とみなされるので養子の数から除かれます。

  • 代襲相続人で被相続人の養子となった者
  • 民法上の特別養子縁組により養子となった者
  • 配偶者の実子で被相続人の養子となった者
参考▼

「法定相続人の数」は、相続を放棄した者があっても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数になります。

「相続を放棄した者があっても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数」とは、非課税限度額の計算における法定相続人の数のカウントのことであり、相続を放棄した者がいる場合でもいない場合でも非課税の限度額は変わらないことになります。

「非課税限度額の計算(法定相続人の数)」と「非課税の適用の可否(相続人に該当するか否か)」とを混同しないように留意する必要があります。

相続を放棄した者などが取得した死亡保険金

財産を取得した者が相続人であるときは、相続により取得したものとみなされ、取得した者が相続人以外の者である場合は遺贈により取得したものとみなされます。

※「相続人」には、相続を放棄した者および相続権を失った者は含まれない。

相続を放棄した者および相続権を失った者が生命保険金などを取得した場合

相続人以外の者が取得したことと解釈され、「遺贈」により取得したものとみなされます。

つまり、上記の者が遺贈により取得したとみなされる生命保険などについては、非課税の適用は受けられないということになります。

事例1:各相続人の取得した生命保険金などの合計額が非課税限度額以下の場合

法定相続人:配偶者乙、子A, 子B(相続放棄した人はいない)

  • 乙 :800万円
  • 子A: 500万円
  • 子B: 生命保険などの取得なし

非課税限度額は500万円×法定相続人の数なので、今回は1,500万円ということになります。

相続人の取得した生命保険などの金額の合計額

乙800万円+子A500万円=1,300万円です。

乙が取得した生命保険金などは800万円で一人当たりの非課税限度額をこえていますが、相続人全体の取得金額が非課税限度額以内なので全額が非課税扱いとなります。

事例2、相続人の取得した生命保険金などの合計額が非課税限度額をこえる場合

法定相続人:配偶者乙、子A, 子B(相続放棄した人はいない)

  • 乙 :1,000万円
  • 子A :800万円
  • 子B :700万円

相続人の取得した生命保険などの金額の合計額

乙1,000万+子A800万円+子B700万円=2,500万円

  • 乙の非課税金額 :1,500万円×1,000万円/2,500万円=600万円
  • 子A の非課税金額:l,500万円×800万円/2,500万円=480万円
  • 子B の非課税金額:l,500万円×700万円/2,500万円=420万円

※退職手当金などの非課税についても同様です。

相続人が取得した退職手当金などのうち一定の金額(6番目)

本来であれば被相続人に支給されるべきであった退職手当金などが相続人などに対して支給された場合

生命保険金などと同様に、相続人の取得した退職手当金などのうち一定の金額は非課税ですが、それ以外は相続または遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となります(相法3①二)。

非課税とされる金額

すべての相続人の取得した退職手当金などの合計額が、退職手当金などの非課税限度額=500万円×法定相続人の数)以下である場合には、その相続人の取得した退職手当金などのすべてが非課税です。

すべての相続人の取得した退職手当金などの合計額が、退職手当全などの非課税限度額をこえる場合には、次のような金額が各相続人の非課税限度額となります。

  • 退職金などの非課税限度額=その相続人が取得した退職手当金などの額/すべての相続人が取得した退職手当金などの合計額

相続人などが受ける弔慰金など

弔慰金、花輪代、葬祭料など(退職金などに該当するものを除く)については、以下の区分に応じた金額の範囲内については相続税の課税対象ではありません。

業務上の死亡の場合 賞与以外の普通給与の3年分
業務上の死亡でない場合 賞与以外の普通給与の半年分

※賞与以外の普通給与の額とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当などの合計額のこと。

国、地方公共団体または特定の公益社団法人などに贈与(寄附)した財産(7番目)

国、地方公共団体、公益事業を行う一定の法人(特定の公益社団法人・公益財団法人など)に対し、取得した財産を寄附した場合には、相続税の課税価格に算入されません。

主な要件

  • 取得した財産を相続税の期限内申告書の提出期限までに寄附すること。
  • 特定の公益社団法人などへの寄附の場合、寄附した者や親族などの相続税・贈与税の税負担が不当に減少するものでないこと。
  • 特定の公益社団法人・公益財団法人などについては、贈与があった日から2年を経過した日までに特定の公益社団(財団)法人などに該当しないこととなった場合、または取得した財産を同日において公益を目的とする事業に供していない場合は非課税の適用はない(措法70②)。

特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭(8番目)

その財産に属する金銭を特定公益信託のうち一定の要件を満たすものを信託財産とするために支出した場合には、その金銭には相続税が課税されません。

特定公益信託

  • 公益信託に関する法律第1条に規定する公益信託であること。
  • 信託終了の時における信託財産がその信託財産に係る信託の委託者に帰属しないこと。
  • その信託事務の実施につき政令で定める要件を満たすものであることが証明されたものであ
    ること。
  • その目的が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与するものとして政令で定めるものの信託財産であること。
注意点▼

相続税の申告書の提出期限までに支出する必要があり、特定公益信託でその金銭を受け入れたものが、その受け入れの日から2年を経過した日までに特定公益信託に該当しなくなった場合には、この特例の適用が受けられなくなり、その支出をした金銭の額は相続税の課税価格に参入されることになります。

次回は、小規模宅地などの相続税や特例などについてです。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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