生命保険の保険料控除と手続き

私たちにとって身近な所得税や住民税、生命保険料控除などを始めとして、配当金と税金の関係、保険金を受け取った時の税金など、生命保険に関わる税金についての知識は、人生設計を考える上で欠かせない。

そこで今回は、生命保険と税金の関係、保険料控除などについて解説しよう。

生命保険料控除(所得税、住民税)

まず最初に所得税と住民税の生命保険料控除についてだ。

生命保険料控除とは、所定の要件を満たす生命保険契約など、支払った保険料などの金額に応じて、 一定の金額が保険料負担者のその年の総所得金額などから控除される制度だ。

平成24(2012)年以後は、従来の一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除と別枠で生命保険料控除(介護医療用)が創設された。

これに伴い生命保険料控除の上限が引き下げられた。

  • 所得税は4万円(従来5万円)
  • 住民税は2万8,000円(従来3万5,000円)

ただし、最大控除額は所得税で12万円(従来10万円)、住民税で7万円(従来7万円)だ。

一般の生命保険料控除の対象となる契約

平成24年1月1日以後に締結した保険契約(新生命保険料)

【保険金受取人】

  • 保険金などの受取人のすべてを納税者本人か、配偶者その他の親族(六親など以内の血族および三親など以内の親族)とする。

【対象となる保険契約など】

  • 主なものは次の契約もしくは他の契約などに附帯して締結した契約(新契約)。
  • 生命保険会社などと締結した生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約
  • 旧簡易生命保険契約のうち生存または死亡に基因して一定額の保険金などが支払われる保険契約
  • 農業協同組合と締結した生命共済契約その他これに類する共済に係る契約のうち生存または死亡に基因して一定額の保険金などが支払われる保険契約

【確定給付企業年金に係る規約】

上記の契約のうち保険期間が5年未満の契約で、いわゆる貯畜保険や貯蓄共済は該当しない。

外国生命保険会社などや外国損害保険会社などと国外において締結した契約や、信用保険契約、傷害保険契約、財形貯蓄契約、財形住宅貯蓄契約、財形年金貯蓄契約などは該当しない。

平成23(2011)年12月31日以前に締結した保険契約(旧生命保険料)

【保険金受取人】

  • 保険金などの受取人のすべてを納税者本人か、配偶者その他の親族(六親など以内の血族および三親など以内の親族)とする。

【対象となる保険契約など】

主なものは次の契約だ

  • 生命保険会社などと締結した生存または死亡に基因して一定額の保険金などが支払われる保険契約
  • 旧簡易生命保険契約
  • 農業協同組合と締結した生命共済に係る契約その他これに類する共済に係る契約
  • 生命保険会社など、損害保険会社などと締結した身体の疾病または身体の傷害その他これらに類する事由に基因して保険金などが支払われる保険契約のうち、医療費支払事由に基因して保険金などが支払われるもの
  • 確定給付企業年金に係る規約または適格退職年金契約
注意点▼

上記の内のうち保険期間が5年未満の契約で、貯蓄保険や貯蓄共済は該当しない。外国生命保険会社などや外国損害保険会社などと国外において締結した契約や、信用保険契約、傷害保険契約、財形貯蓄契約、財形住宅貯畜契約、財形年金貯蓄契約などは該当しない。

介護医療保険料控除の対象となる契約

平成24(2012)年1月1日以後に締結した保険契約

【保険金受取人】

  • 保険金などの受取人のすべてを納税者本人。
  • 配偶者その他の親族(六親など以内の血族および三親など以内の親族)。

【対象となる保険契約など】

主なものは次に掲げる契約または他の保険契約に附帯して締結した契約。

  • 生命保険会社などや損害保険会社などと締結した疾病または身体の傷害などにより保険金が支払われる保険契約のうち、医療費支払事由に基因して保険金などが支払われる保険契約
  • 疾病または身体の障害などにより保険金などが支払われる旧簡易生命保険契約または生命共済契約などのうち一定のもので、医療費など支払事由により保険金などが支払われるもの。
注意点▼上記のうち、保険期間が5年未満の契約で、いわゆる貯蓄保険や貯蓄共済は該当しない。外国生命保険会社などや外国損害保険会社などと国外において締結した契約や、信用保険契約、傷害保険契約、財形貯蓄契約、財形住宅貯蓄契約、財形年金貯蓄契約などは該当しない。

個人年全保険料控除の対象となる保険契約など

平成24年1月1日以後に締結した保険契約(新個人年金保険料)

【保険金受取人など】

  • 年金の受取人は、保険料もしくは掛金の払込みをする者(納税者本人)かその配偶者。
  • 保険料などは、年金の支払いを受けるまでに10年以上の期間にわたって定期に支払う。
  • 年金の支払いは、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期または終身の年金。
  • 被保険者などの重度の障害を原因として年金の支払いを開始する10年以上の定期年金または終身年金であるものも対象。

【対象となる保険契約など】

主なものは以下の契約のうち年金(退職年金を除く)を給付する定めのある保険契約など、または、他の保険契約などに附帯して締結した契約。

  • 生命保険会社などと締結した生存または死亡に基因して一定額の保険金が支払われる保険契約
  • 旧簡易生命保険契約のうち生存または死亡に基因して一定額の保険金などが支払われる保険契約 `
  • 農業協同組合と締結した生命共済契約その他これに類する共済に係る契約のうち生存または死 亡に基因して一定額の保険金などが支払われる保険契約

平成23年12月31日以前に締結した保険契約(旧個人年金保険料)

【保険金受取人など】

  • 年金の受取人は、保険料もしくは掛金の払込みをする者(納税者本人)かその配偶者。
  • 保険料などは、年金の支払いを受けるまでに10年以上の期間にわたって定期に支払う。年金の支払いは、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期または終身の年金。
  • 被保険者などの重度の障害を原因として年金の支払ぃを開始する10年以上の定期年金または終身年金であるものも対象。

【対象となる保険契約など】

主なものは以下の契約のうち年金(退職年金を除く)を給付する定めのある保険契約など。

  • 生命保険会社などと締結した生存または死亡に基因して一定額の保険金などが支払われる保険契約
  • 旧簡易生命保険契約
  • 農業協同組合と締結した生命共済に係る契約その他これに類する共済に係る契約

控除額

平成23年12月31日以前に締結した保険契約などに係る保険料と、平成24年月1日以後に締結した保険契約などに係る保険料は生命保険料控除の控除額の計算方法が異なる。

所得税の生命保険料控除額

平成24年1月1日以後に締結した保険契約(新契約)

図表5‐1 所得税の生命保険料控除額(―般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料共通)

年間正味払込保険料控除される金額
20,000円以下支払保険料の全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円

平成23(2011)年12月31日以前に締結した保険契約(旧契約)

図表5‐2 所得税の生命保険料控除額(一般の生命保険料、個人年金保険料共通)

年間正味払込保険料控除される金額
25,000円以下全額
25,000円超 50,000円以下(正味払込保険料×1/2)+12,500円
50,000円超 100,000円以下(正味払込保険料×1/4)+25,000円
100,000円超一律50,000円

旧契約と新契約の両方に適用する場合

一般の生命保険料控除または個人年金保険料控除の適用を受ける場合

  • 上記のイ、口にかかわらず一般の生命保険料控除または個人年金保険料控除の控除額はそれぞれ旧契約、新契約により計算した金額の合計額(上限4万円)となる。

つまり、控除の区分ごと(一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除)にそれぞれ下記の限度額の計算となる。

図表5‐3 新旧契約がある場合の控除限度額

適用契約控除限度額
旧契約のみで計算した場合50,000円
新契約のみで計算した場合40,000円
旧契約と新契約それぞれで計算した金額の合計額

生命保険料控除額(住民税)

平成24(2012)年1月1日以後に締結した保険契約(新契約)

図表5‐4 住民税の生命保険料控除額(―般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料共通)

年間正味払込保険料控除される金額
12,000円以下全額
12,000円超132,000円以下(正味払込保険料×1/2)+6,000円
32,000円超 56,000円以下(正味払込保険料×1/4)+14,000円
56,000円超一律28,000円

平成23年12月31日以前に締結した保険契約(旧契約)

図表5-5 住民税の生命保険料控除額(一般の生命保険料、個人年金保険料共通)

正味払込保険料控除される金額
15,000円以下全額
15,o00円超 40,000円以下(正味払込保険料×1/2)十7,500円
40,000円超 70,000円以下(正味払込保険料×1/4)+17500円
70,000円超一律28,000円

旧契約と新契約の両方に適用する場合

控除の区分ごとにそれぞれ下記の限度額の計算となる。

図表5‐6 新旧契約がある場合の控除限度額

適用契約控除限度額
旧契約のみで計算した場合35,000円
新契約のみで計算した場合28,000円
旧契約と新契約それぞれで計算した金額の合計額

対象となる保険料

  • その年において生命保険契約などに基づく剰余金の分配もしくは割戻金の割戻し(契約者配当)を受け、またはそれを保険料の払込みに充てた場合には、保険料から契約者配当を差し引いた金額が、生命保険料控除の対象となる正味払込保険料となる。ただし、保険金買増方式など、契約者配当の引出しができない契約の場合は、表定保険料から差し引く必要はない。
  • 払込期日が妻1来した保険料であっても、現実に支払っていないものは含まれない。
  • その年中に自動振替貸付により保険料の払込みに充当した金額は、その年中に支払った保険料とする。従って、自動振替貸付金を後日返済しても、その返済した金額は支払った保険料とはならない。
  • 前納(保険料を数年分あるいは全期間分一括して支払う方法。支払う保険料には所定の割引率が適用される)保険料は以下の算式により計算した金額が支払った保険料となる。
    注意点▼

    ※前納保険料×その年中に到来する払込期日の回数/前納した払込期日の総回数

  • 雇用主が役員または使用人のために支払った保険料のうち、役員または使用人の給与などとして課税されたものは、その役員または使用人の支払った保険料とみなされる。
  • 保険料払込終了後、保険金などの支払い開始日以後に支払われる契約者配当は支払った保険料から控除しなくてもよい。
  • 契約者配当を保険会社に積み立てておく場合であっても、契約者の申し出でいつでも支払いの受けられるものについては、積み立てられたときに支払いがあったものとして支払った保険料から差し引く。

生命保険料控除を受ける際の手続き

年末調整を受ける場合

  • その年最後の給与などの支払いを受ける日の前日までに、保険料控除申告書を給与などの支払い者を通じて、納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
  • 原則として、保険料控除申告書に支払ったことの証明書を添付するかまたは申告書提出の際に証明書を提示しなければならない。
  • 証明書が申告書に添付または提示されない場合であっても、翌年1月31日までに証明書の提出または提示を条件として、年末調整の際、控除しても差し支えない。
  • 勤務先での団体契約で払い込んでいる場合については、勤務先の代表者やその代理人の確認を中告書に受けることにより、証明書の添付または提示に代えられる。
  • 月払い契約の保険料については、証明書に代えて以下の書類でもよいとされている。
契約締結日必要書類
9月30日まで1カ月分の保険料など記載の領収書
10月1日以降第1回保険料充当金領収書

確定申告による場合

  • 申告納税者が、生命保険料控除を受けるためには、確定申告書にその控除を受ける生命保険料の金額を記載して、これを翌年2月16日から3月15日までに住所地の所轄税務署へ提出することが必要である(還付の場合は1月1日から)。
  • 原則として、支払ったことの証明書を確定申告書に添付または申告書提出時に提出しなければならない。
  • 給与所得者で確定申告を行うものについて、年末調整時に控除証明書を提出してあるときは、再び同書類の添付は要しない。

契約者配当と税金

契約者配当は、過払いとなった保険料の事後精算の性格を持つことから、割り当てられた時点では、課税関係は生じない。

ただし、生命保険料控除の計算や、一時所得の金額の計算上控除すべき保険料は、本来の保険料から契約者配当の額を差し引いた正味払込保険料をもとに計算を行う。

受取保険金や解約返戻金が相続税や贈与税の課税対象となる場合、保険金とともに支払われる配当金は保険金として取り扱う。

受取保険金とその税金についてはこちら。。

ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。

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