
事業承継のプロセスと相続プラン
個人の相続プランに比べ事業承継プランは難度が格段に上がる。
相続に加え、会社への思い入れ、会社法、法人税、株主構成や財務状況なども考慮する必要があるからだ。
さらに、その法人が属する業界の環境面も考慮した上でプランニングしていかなければならない。
廃業に追い込まれるケースも!
特に中小法人では所有と経営が分離できていない場合が多く、事業承継につまずき事業が不安定になる傾向がある。
最悪の場合は、廃業に追い込まれるなど極めて大きな問題になるケースもある。
会社の所有権と経営権を一緒に後継者に引き継ぐのが一般的だが、円滑な事業承継を行うには適切な計画が必要だ。
その際、自社株を円滑に後継者に取得させるこが重要になる。
会社は経営者によって業績は大きく変わる。
したがって、後継者の育成が最大のポイントとなるだろう。
事業の現状を分析する
まず、手始めに財務状況、損益、キャッシュフローを把握する。
その際、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー表、営業報告書などから会社の経営状況を概括的に把握するようにしてほしい。
財務諸表が粉飾されているケースも多く見かけるが、ここは一つ真摯に取り組んでもらいたい。
資産構成や利益の額は株価に影響を与えることも知っておいてほしい。
移転コストに直結すること
その株価は相続税や贈与税などの後継者への移転コストにも直結する。
これらはプランを作成する上で必ず把握しておかなければならない項目だ。
また、経営理念とはオーナーの会社への思いが反映されたものだ。
後継者はその思いも一緒に継承する、ということに留意してほしい。
そしてまた、自社株は誰が取得するかでその評価方式が変わる。
つまり、相続プラン同様、戸籍上の人間関係の把握も必要になる。
例えば、オーナー個人の使用人や内縁関係者、関連会社なども評価方式に加わる。
だからできる限りこれらの確認も怠らないようにしよう。
問題点を把握する
現状分析を元に、何がネックになっているかを抜き出して確り把握しよう。
一般的には、自社株価の高いことで移転コストに問題が生じる。
その他、、、
後継者がいない、業績不振が続き回復のめどが立たない、債務超過に陥っていて存続が危ぶまれる、今後の方向性が見えない、といった問題が発生するケースもある。
移転コストを軽減する方法として、事前の贈与を考える人は多いと思う。
しかし、安定した経営権の確保という観点から見た場合は逆効果になる可能性が高い。
この方法だと株式が分散してしまうからだ。
したがって、節税をしながら経営権を後継者が直ぐに行使できるような、もっと合理的な算段が必要だ。
バランスで判断する
現状を分析して導き出された問題点をもとにプランを作成することになるが、、、
この際、個々のライフプランと会社の経営理念などを重ねあわせて考える必要がある。
納税対策、推定相続人へ配慮する必要も出てくるからだ。
また、会社法の検討、計画を実行した際の経営への影響なども考え合わせる必要がある。
つまり、あらゆる角度から総合的に判断した事業承継計画であるべきだ。
例えば、相続発生後に自社株の分散を防ぐことは非常に難しい。
計画が後手に回ると実行限界が生じ、効用も低下してしまう。
通常、事業承継の設計は検討事項も多く複雑だ。
そのため、経営状況に応じてさまざまな手法を採用するには長い期間を必要とする。
実際問題として、事業承継計画が必要になるのは、自社株評価の高い会社が多い。
評価額が高くても上場株式とは異なり処分するのが困難だ。
つまり、換金性・担保価値ともにほとんどないになどしい。
こうしたケースで、会社オーナーが個人的に財産をあまり所有していないと、納税資金に窮することになる。
その様な場合、次のような手段が考えられる。
自社株を下げる
自社株の評価額を下げることによって事業承継時の移転コストを下げることを検討する。
評価額は財務内容を悪化させると下がる。
しかし、これは経営の健全性の観点から見た場合極めて望ましくないことだ。
したがって、事業承継設計として扱う場合は、そのリスクを極力減らして行う必要がある。
所有株数を減らして株式を分散させる
株式の所有を分散することによってオーナー経営者の自社株を減少させ、相続税を軽減させる。
この場合、経営の意思決定の迅速性や統一性を著しく悪化させる恐れがある。
責任の所在も曖昧になり、経営も不安定になるリスクを負う可能性も大きい。
だから、分散させつつ、安定化を図ることが重要なポイントだ!
さいごに
オーナー経営者の保有する自社株は換金性に乏しい。
したがって、相続財産に占める自社株の割合が多い場合は、納税資金の確保が重要だ。
結果、自社株の処分による資金確保、退職金の支給、役員報酬の増加の検討、生命保険の加入などを検討する必要も出てくるだろう。
なお、婚姻、離婚、内縁、養子などの定義や相続の考え方についてはこちらを参考にしてほしい。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。