
相続プラン考察
キャッシュフローデザインの目的は、個人の思いや事業のビジョンを実現するために必要な所得や利益を獲得することだ。
そのプロセスの仕上げが次世代への承継ということになるだろう。
また、承継や相続は経済的な側面だけではない。
その人の思いや築き上げてきたライフスタイルも一緒に承継していく。
そのした無形の資産にも配慮する必要があるだろう。
2つの側面からアプローチする!
つまり、相続・事業承継設計は単なる相続税対策に留まらない。
個々の思いや法的な側面も考えて総合的に検討し、実施していく必要がある。
したがって、個々の思想やライフスタイルに照らし合わせなが検討していくことが大切だ。
そのプランはリスクマネジメントなども含めた広範囲な設計になるだろう。
なお、ケー スによっては相続税の発生しない相続・事業承継も多くある。
いずれにせよ争、いのない遺産の分割や相続発生後の家族の生活設計、後継者の経営権の確保などがスムーズに行われるべきだろう。
相続税の発生のいかんを問わず準備しておこう。
相続プランを設計する
相続プランは、相続発生までの本人とその家族、相続発生後に残される家族のプランの二段構えのプランになるのが一般的だ。
- 本人のライフスタイルを前提に、配偶者と家族のプランを重ねあわせたライフストーリーを設計する。
- 配偶者単独のライフスタイルを確認する。
- 子どもたちのライフスタイルに配慮する。
多くの場合、妻が残されるかたちになる。
従って配偶者の老後生活への配慮には十分な検討が必要だ。
また、相続が発生する際は、子どもたちが独立している場合が多い。
なお、孫が学校に通っている場合には、転向問題も絡んでくる。
つまり、多くの場合、親の単独の相続設計に留まらず子供も含めた相続設計が必要になる。
例えば、子供の判断能力が充分でない場合、自分がいなくなった後の子供の生活が心配だろう。
このような場合は、成年後見制度の利用も検討しておく必要がある
現状の分析
- 収入と支出を把握する。
- 各人の性格やお金に対する考え方をあらかじめ把握しておく。
- 戸籍上、戸籍外の人間関係を確認しておく。
- 財産・債務の把握。
- 相続税の仮説を立てておく。
上記の中でも2番めが特に重要だ。
どんなに素晴らしいプランを立てたとしても「各人の性格やお金に対する考え方の把握」を誤るとプランそのものの意味がなくなる可能性があるからだ。
しかし、これを把握するのがとても難しいことも確かだ。
戸籍上、戸籍外の人間関係を確認しておく。
通常は推定相続人を把握する作業になる。
この際、戸籍謄本から推定相続人を正確に把握しておく。
また推定相続人以外の親族もできる限り把握しておく必要がある。
財産・債務の把握
財産だけでなく債務の把握も必要だ。
債務は「相手の財産」なので、設計する際にあるの制約がでてくる場合が多い。
現時点では債務ではなくても、相続発生後に顕在化するケースもある。
例えば、保証債務などは潜在的な債務なので表面化しずらい。
したがって、本人だけではなく配偶者や子供もの財産・債務も把握する必要がある。
言うまでもないが、相続は本人だけではなく配偶者、子供も含めた包括的な問題だからだ。
相続税の仮説
最初に本人の財産・債務の評価を行う。
相続税の申告ではないので細かい金額までは必要ない。
ただし、権利関係だけは間違えないように注意してほしい。
試算した相続税額が相続税納税準備の出発点となる。
また一次相続だけではなく、二次相続の相続税も試算しておく必要がある。
本人の生活設計
「これからどのようにしたいか」家族に「どのような生活をしてほしいか」「誰に何を残したいか」などを決める。
判断能力が低下した時の備えとして任意後見契約を結んでおくのもいい。
しかし、時間をかけて立てたプランが実行できなかったら意味がない。
従って、相続発生に至るまでの間の財産管理を、任意後見人に委ねておくなども検討しておくといい。
遺族の生活設計
遺族が不安なく暮らせるかどうかのアウトラインをつかんでおく必要がある。
経済的な不安が残る場合は、それらを解消するための具体的な対策が必要だ。
例えば、子供が特別障害者に該当する場合は「特定贈与信託」を活用することにより、6000万円までなら非課税で贈与できる。
なお、自分が亡くなった後の財産管理について取り決めておく必要もあるだろう。
バランスが大切
相続プランをスムーズで円満な相続が実現できる設計に仕上げる必要がある。
また、設計そのものが、過去から現在までの経験に基づく生活感と価値観に左右されることを忘れてはならない。
たとえ妥当な設計だったとしても、それが自分の理解をこえるものだった場合、時間が経過するに連れ不安を招く可能性が高い。
設計上の主な項目は、老後の準備、遺産分割の準備、納税の準備などが挙げらる。
不動産の有効活用、余剰資金の運用、リスクヘッジなどは各対策の中に組み込まれる形で実行することになる。
相続税の支払い能力をシミュレーションした結果、資産の組み替えを検討するケースもあるだろう。
資産の組み替えの際には、貯蓄方法、資産の運用方法、有利な売却についての具体的な方法、借り入れの時の諸注意事項など、細かな部分について確認しておく必要がある。
そして、1つの方法だけでいいということはない。
しらがって、すべての資産・負債を考慮したポートフォリオの構築が必要だ。
※ポートフォリオについては「ポートフォリオの記事一覧」を参考にしてほしい。
相続プランの実行
心理、法律、税務、経済環境などが相続対策に大きく影響する。
したがって、よりベーターなプランを行うために、数年間を要することも多い。
だから、相続プランは早期からスタートする方がいい。
とはいえ、その後の社会環境や経済環境、税制改正などは変化する。
前提が異なれば、設計したプランも十分な効力を発揮できない。
このようなリスクを回避するため、定期的にプランの見直しが必要になる。
見直しの際の注意点
- 推定相続人の異動、相続税額の変動も確認しておく。
- 毎年の確定申告を確認し、収支や所得の変動を把握しておく。
- 贈与がる場合は贈与税額も確認しておく。
- 事業承継がある場合は、法人税などの申告内容も確認しておく。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。