エビデンスの定義と現代的な位置づけ
科学的エビデンスの階層構造
科学的なエビデンスには、以下のような階層があります(ピラミッド構造):
- メタアナリシス・システマティックレビュー(最上位)
- ランダム化比較試験(RCT)
- コホート研究・症例対照研究
- 症例報告・専門家の意見(最下層)
この階層構造は「上位であるほど信頼性が高い」という前提に基づいていますが、すべての分野や個別の事例において通用するとは限りません。
エビデンスの限界と問題点
- 外的妥当性の欠如:RCTで有意だった結果が、現場では再現されないことも多い。
- 平均値への過剰依存:個人差を無視し、「平均的な人間」に最適化された判断。
- バイアスと選択的報告:製薬会社等の利害関係がエビデンスに影響する可能性。
エビデンスとは「確かさ」を意味するものではなく、「現時点で最も妥当とされる仮説の支え」です。科学的であることと絶対的であることは、まったく異なるのです。
なぜ「誤用」が起きるのか?
エビデンスの誤用は、主に以下の2つの状況で起こります。
- 専門家自身が、エビデンスの本質を理解していない場合
- 政治的・商業的な目的で“エビデンス”が利用される場合
特に後者では、エビデンスが「便利な錦の御旗」として使われ、反対意見を封殺する道具に成り下がる危険性があります。
まとめ:エビデンスは「判断の補助」にすぎない
私たちはエビデンスに依存しすぎることで、かえって柔軟な思考や現場感覚を失いがちです。大切なのは、エビデンスを絶対視するのではなく、それを「問い直す視点」を持つこと。専門家であればなおさら、その責任は重いはずです。