企業保険契約における生命保険の税務処理のポイント

生命保険契約における契約者の変更や契約転換は、多様な理由で発生します。これらの変更に伴う経理処理と税務処理には注意が必要です。特に、法人契約から個人への変更、個人から法人への移行、法人間の転籍にはそれぞれ異なる考慮が必要です。以下で、これらのシナリオごとの経理処理と税務処理について解説します。

契約者配当の経理処理

契約者配当(社員配当を含む)は、原則としてその支払いを受けた日の属する事業年度の益金に算入する。

契約形態別にみた配当金の経理処理は以下のとおりだ。

事業保険の場合

養老(終身)保険(定期保険特約付養老保険で保険料区分がされていない契約も含む)
  • 現金配当の場合

雑収入として益金計上する。

借方貸方
現金雑収入

保険料のすべてを全額資産計上している場合は、「保険積立金」から控除できる。

借方貸方
現金雑収入
  • 相殺配当の場合

相殺配当の場合は、配当金を差し引いた実際の払込保険料額を資産に計上する。

借方貸方
保険積立金現金
(契約者配当を差し引いた保険料)
  • 積立配当の場合

資産計上している「保険積立金」から控除できる。

借方貸方
契約者配当積立金保険積立金

なお、積立配当の利子については、その通知のあった日の属する事業年度の益金に算入する。

借方貸方
契約者配当積立金雑収入
定期付養老(終身)・定期保険
  • 現金配当の場合
借方貸方
現金雑収入
  • 相殺配当の場合

事例1

  • 終身部分保険料:37万円
  • 定期部分保険料:13万円
  • 配当金:10万円
借方貸方
保険積立金  37万現金   40万
 定期保険料  13万雑収入  10万
  • 積立配当の場合
借方貸方
契約者配当積立金雑収入

福利厚生保険の場合

  • 現金配当の場合

益金に算入する。

借方貸方
現金雑収入
  • 相殺配当の場合

保険料は給与処理され、配当金と支払う保険料は相殺される。

借方貸方
給与現金
雑収入
  • 積立配当の場合
借方貸方
契約者配当積立金雑収入

契約転換の経理処理

転換時の税務処理は、以下の手順で行う。

  1. 旧契約の保険積立金および契約者配当積立金として資産に計上している額を取り崩す。
  2. 転換後契約に充当される金額(転換価格)は転換後契約の保険料処理に準じて行う。

事例2

定期保険特約付終身保険(月払い)に転換した場合。

a)契約形態

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員、従業員
  • 死亡保険金受取人:法人

b)契約転換時の内容

  • 旧契約の積み立てられた保険積立金:100万円
  • 旧契約の積み立てられた契約者配当積立金:10万円
  • 転換時に支払われる清算配当:2万円
  • 転換価格:70万円
  • 転換後契約の保険期間:10年
  • 契約日10月1日:(決算~3月末)

基本転換方式について

  • 転換価格70万円を終身保険に充当
借方貸方
保険積立金(資産)  70万保険積立金     100万
雑損失       42万契約者配当積立金   10万
雑収入        2万

比例転換方式について

  • 転換価格を終身部分:30万円、定期特約部分:40万円に充当
借方貸方
保険積立金(資産) 30万保険積立金     100万
前払保険料注1   38万契約者配当積立金  10万
 定期保険料注2   2万雑収入        2万
雑損失      42万
注意点▼

注1:前払保険料は40万円-2万円(初年度分保険料)=38万円

注2:定期保険料は40万円×6カ月/10年×12カ月=2万円(初年度は契約日から決算日まで)

次年度からは前払保険料を取り崩していく。

借方貸方
定期保険料(損金)  4万前払保険料  4万

注意!定期保険料は40万円×12カ月/10年×12カ月=4

定特転換方式について

  • 転換価格を定期保険特約に充当
借方貸方
前払保険料注1   66.5万保険積立金    100万
定期保険料注2(損金) 3.5万契約者配当積立金 10万
 雑損失       42万雑収入      2万
注意点▼

注1:前払保険料は70万円-3.5万円(初年度分保険料)=66.5万円

注2:定期保険料は70万円×6カ月/10年×12カ月=3.5万円(初年度は契約日から決算日まで)

次年度からは前払保険料を取り崩していく。

借方貸方
定期保険料(損金)  7万前払保険料  7万

注意!定期保険料は70万円×12カ月/10年×12カ月=7万円

保険契約の変更編保険金の受取時の税務編
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まとめ

保険契約の契約者変更や契約転換には、様々な経理処理と税務処理が伴います。特に、法人間での契約の移行や個人から法人へ、またはその逆の場合には、税務上の影響を慎重に検討する必要があります。正確な評価と適切な処理を行うことで、予期せぬ税負担を避けることができます。変更の際には、専門の税理士や保険コンサルタントの助言を得ることをお勧めします。

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