
30代後半になると親の老後のことが気にかかるようになり、それを機に自分の老後プランに取り組む試みも増えているようです。
そこで今回は、老後収支がマイナスになる場合に、資産残高を増やす方法、収入プランなど、老後資金を確保する方法について解説します。
老後の資産を増やす3つの方法
老後収支をシミュレーションしてみると、キャッシュフローが不足しているケースが多く見受けられます。
そのような時に資産残高を増やす方法には以下のような方法が考えられます。
- 収入を増やす。
- 支出を減らす。
- お金を運用して増やす。
それでも資産残高がマイナスになる場合は、運用プランの見直し、保険の見直し、ローンの見直し、資産の売却などを考える必要があります。
それでも解消できない場合は、現状のライフスタイルの見直しを試みたほうがいいでしょう。
再就職、配偶者が働く、援助など、根本的なキャッシュフロー改善が必要になるからです。
言うまでもありませんが、このような時に投資に手を出してはいけません。
投資に関しては、このような状態が改善できた暁に改めて検討しましょう。
その際にあらかじめ知っておいた方がいい、大切な事柄があります。
キャッシュフローの大小です。
一般的には、キャッシュフローが大きい順から並べると、ビジネス、不動産、ペーパーアセット、コモディティになります。
ただし、アプローチ方法やその段取りを間違えると、資産がマイナスになることもあります。
最近は、分散投資がよく話題に登るようですが、実際には分散投資になっていない商品も多いようなので注意しましょう。
また、先程提示した4つのカテゴリー全てを網羅して提案できるプランナーもまれです。
そして、分散投資によって必ずリスクを軽減できるわけではありません。
※分散投資やキャッシュフローに関しては「キャッシュフローをデザインする!」や「マネープラン・ガイダンス」を参考にしてください。
資産の継承(相続)
次に老後のライフデザインの最大の特徴でもある相続について検討してみましょう。
その際に注意してほしいことがあります。
物ばかりではなく、伝統や精神、家訓といった無形のものも資産に含まれるということです。
しかし、あまり広範囲に渡ると、焦点がボケて何の話だか見えなくなる可能性もあります。
ということで、今回はファイナンスに絞って解説させていただきます。
- 被相続人予定者の生活設計
- 推定相続人の生活設計
- 分割の準備
- 遺産争いの防止
- 納税資金の準備
相続に限定すると、これらがファイナンス上の主な検討項目になるでしょう。
また、相続の手順は以下のような流れで行うのが一般的です。
- 相続財産を把握
- 相続税の評価額を計算
- 相続税額を計算
- 相続税が発生する場合は納税資金の準備(相続税を減らす、相続財産の評価額を減らすなどの各種設計・準備)
- 財産を遺族にどのように残したいかを考え、それに対する対策を考え実行
ここでのポイントは、相続財産や相続税額を定期的に見直し、その都度プランのチェックを行うことです。
その他、生命保険の見直し、運用設計、終末期医療の選択、葬儀の方法、お墓の準備なども考えらます。
いずれにせよ有終の美とするためのライフデザインに仕上げましょう。
※相続プランについては、「相続プラン・ガイダンス」保険プランについては「リスクをマネジメントする!」運用については「キャッシュフローをデザインする!」や「マネープラン・ガイダンス」を参考にしてください。
老後の収入プラン
退職後の収入の柱は公的年金というのが一般的でしょう。
公的年金に関してあらかじめ注意しておいてほしいことがあります。
- 公的年金の受給金額は、生年月日と年金加入暦、現役時代の収入(厚生年金・共済年金の場合)によって異なる。
- 年金の改正によって受給年齢が引き上げられるようになったため、受給開始時期も生年月日によって異なる。
したがって、自分がいくら年金を受け取れるのかを、必ずあらかじめ確認しておいてください。
年金の加入暦については基礎年金番号が分かれば、日本年金機構のホームページや年金事務所の窓口で調べる事ができます。
記録の漏れや誤りを見つけたらすぐに訂正手続きを行ってください。
基礎年金番号が分からない場合は、本人確認書類を持って年金事務所の窓口へ行けば教えてくれます。
具体的な年金見込み額については「制度共通年金見込み額照会回答票」で確認できます。
老齢基礎年金を受給する場合には、繰上げ受給・繰下げ受給という選択肢もあります。
全部繰り上げ:減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳に達する日の前月までの月数
※一部繰り上げもありますが、こちらは昭和16年4月2日から昭和24年4月1日(女子は昭和21年4月2日から昭和29年4月1日)生まれの方が対象です。
一度繰上請求をすると変更できないので慎重に選択してください。
繰下げ請求と増額率
請求時の年齢 増額率 66歳0ヵ月~66歳11ヵ月 8.4%~16.1% 67歳0ヵ月~67歳11ヵ月 16.8%~24.5% 68歳0ヵ月~68歳11ヵ月 25.2%~32.9% 69歳0ヵ月~69歳11ヵ月 33.6%~41.3% 70歳0ヵ月~ 42.0% ※上記表は日本年金機構(2019年10月10日更新)ホームページより抜粋
なお、60歳代後半以降も厚生年金適用事業所に在職していると老齢厚生年金が減額される場合があるので注意してください。
※公的年金については「老後プランの要、年金制度の仕組みを理解しよう。」「リスクをマネジメントする!」などを参考にしてください。
公的年金以外の収入プラン
公的年金以外には、企業年金や個人年金、あるいは「仕事」「金融資産の運用」「資産活用」などが考えられます。
改正高齢雇用安定法により継続雇用制度の導入などが義務付けられました。
ですから、定年制の廃止、定年年齢の引き上げなどの機会を活用して収入を得る方法が最も現実的です。
ただし、勤務時間の短縮や給与の引き下げなどの条件変更が行われるのが通例です。
また、経験やスキルを生かして新たな職場で働くという選択肢もあります。
しかしながら、現実的には中高年の雇用環境は厳しいため、起業という道を選ぶケースも目立ってきました。
直ぐに収入を得ることが難しい事業種で起業する場合は、運転資金の確保が必要です。
ただ、資金が潤沢だったとしても事業を継続していくには、それ以外の要素の方が重要です。
事業継続には、潤沢な資金よりも個々の能力、熱意や忍耐力といった他の要素が欠かせないからです。
逆に、まったく自己資金を使わずに起業して成功している人もたくさん知っています。
むしろ、潤沢な資金を確保できていない方のほうが成功率が高いくらいです。
※起業やビジネスについては「キャリアが際立つようにデザインする」を参考にしてください。
所有している資産を活用する
再就職、起業の他には、所有している資産を活用して収入を得るという方法も考えられます。
インフレに対応するためにもある程度の運用は必要だと思います。
しかし、リタイアした後はリスク許容度が低くなるのが一般的です。
したがって、投資対象の商品内容を十分理解した上で、安全性を重視した運用を心がける必要があるでしょう。
また、現在の場所以外に住居を確保できるケースも有ると思います。
その場合は、マイホームを資産として活用する方法も考えられるでしょう。
例えば、住宅の買換えで得られた利益を老後資金に充てる。
転居によって空いた自宅を賃貸してキャッシュフローを得る。
増築やリホームをして一部を賃貸するといった方法です。
あるいはまた、自宅を担保に資金の貸付を受け、相続死亡時に精算するという「リバースモーゲージ」などを利用して生活資金の確保を考えてもいいでしょう。
※リバースモーゲージについては「リバースモーゲージを老後プランにどう生かすのか?」を参考にしてください。
手持ちの資金を活用する
金融自由化により金融商品が驚くほど増えたのは嬉しいことです。
しかし、選択肢が大きく広がった分、商品の選択次第で増減が大きく変化することも確かです。
自由度が増す。
それは同時に、所謂勝ち組と負け組の差が広がる環境にもなったことを意味しています。
ご承知のように、金融危機などによって大きな損失を抱えてしまった人たちもたくさんいます。
消費者を保護するための法律はありますが、最終的な運用責任はすべて私たち個人にある、という事実から逃れることはできません。
投資に関することはすべて自己責任!
そのことを改めて強く認識しておく必要があるでしょう。
それ同時に、どの程度の許容範囲や技能があるかを明確に認識しておく必要もあるでしょう。
手持ち資金を活用する場合は、プロを目指すのでない限り、退職後のライフスタイルを重視して、リスク許容度に応じたポートフォリオに徹するようにしてください。
運用だけではなく、分散、安全性、流動性、収益性のバランスを考慮しつつ組み立てるようにしてください。
前にも話しましたが、分散投資しているつもりでも、実際にはペーパーアセットのみになっている方がほとんどです。
つまり、本来の分散投資からかけ離れた状態だということです。
ではなぜ、そのようなポートフォリオになっているのでしょうか?
接する頻度の多いものを優先して選択する傾向があるからです。
それが人の性というものです。
つまり、受動的な態度によって、悲惨な資産状況を生み出している場面が多いのです。
実際、本来の投資とは、もっともっと大きいものであり、大きな可能性も秘めています。
※そのことについては、「キャッシュフローをデザインする!」のコーナーで詳しく解説してるので、そちらを参考にしてください。
老後の生活資金は、第二の人生のための大切な資金です。
公的年金をはじめ、企業年金や個人年金、退職一時金などで確りと確保するようにしましょう。
さらに、死後の整理資金や万一のための準備資金としての予備資金も確保しておきましょう。
今直ぐ必要になるものではありませんが、安心を確保するにはこうした予備資金も準備しておく必要があります。
生活費、予備資金で手一杯!・・・
そんな状態にならないように、今から確り準備をして第二の人生を謳歌(おうか)できるようにしましょう。
旅行、趣味、創作活動、ボランティア活動なども含めた楽しい老後を計画しましょう。
それではまたお会いしましょう。。
次回は、老後のリスクマネジメントの一部、成年後見制度について解説したいと思います。
CFP® Masao Saiki