
老後のライフプラン研究-8-
今回の老後プランのガイダンスは、任意後見制度、賃貸用不動産投資、自宅の賃貸、国のリバースモーゲージ制度などについてです。
任意後見制度
任意後見は、本人自身が将来判断能力の衰えた場合に備え、あらかじめ契約によって後見人を選任しておくという制度です。
任意後見契約は、必ず公正証書によって行わなければなりません。
契約の効力は家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されたときから生ずる旨の特約を付する事が要件となります。
なお、任意後見人の資格には法律上の制限はなく、法人を後見人にする事も複数の人を後見人にすることもできます。
任意後見を開始する必要が生じた場合は家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申し立てを行います。
申し立て権者は、本人、配偶者、四親など内の親族、または任意後見受任者ということになります。
申し立てを受けた裁判所は、精神上の障害により本人の判断能力が不十分な状況にあると認めた時は、任意後見人受任者に不適任な事由がある場合を除き、任意後見監督人を選任する審判を行います。
任意後見監督人の資格については法定後見と同じです。
任意後見監督人が選任された時点から、任意後見契約の効力が発生し、任意後見人が代理権を行使できるようになります。
任意後見人が後見事務を開始すると任意後見監督人がその事務を監督し、定期的に裁判所への報告を行います。
任意後見人は必要に応じて任意後見監督人に対する報告を求められ、任意後見監督人からの調査を受けます。
これによって任意後見人による事務処理の適正が担保される仕組になっています。
任意後見契約が登記されている場合には任意後見制度を選択した本人の自己決定を尊重し、家庭裁判所は特に必要があると認める場合を除き法定後見の開始の審判を行う事はできません。
また開始後に法定後見の審判がなされた場合には、任意後見契約は終了する事になります。
そして、任意後見人が有するのは代理権のみで同意権・取消権はありません。
与えられた代理権の範囲が狭すぎたり、本人に対して同意権・取消権による保護が必要な場合には、法定後見開始の審判を行う必要があります。
任意後見人はその事務を行うにあたって本人の意志を尊重し、かつ、その心身の状態および生活状況に配慮しなければなりません。
任意後見監督人の選任前においては、公証人の証明を受けた書面によっていつでも任意後見契約を解除することができます。
成年後見登録制度
成年後見登録制度は、法定後見および任意後見契約に関する新たな登録制度として創設されました。
後見・保佐・補助の審判が行われた場合には、裁判所書記官の嘱託によって法定後見の登記がなされます。
法定後見の登記には、後見・保佐・補助の種別や同意権・代理権の範囲などが記載されています。
賃貸用不動産投資と自宅の賃貸について
不動産を利用した老後資金プランとして、アパート・マンション・店舗などの賃貸用不動産に投資するという方法があります。
しかし、不動産投資である以上、賃料や不動産価格の下落などのリスクは伴ないます。
また実務などに対応できるのかも十分検討しなければなりません。
持ち家を住み替える検討をする場合、自宅を手放したくない人や短期間だけ住み替えたい人にとっては自宅を賃貸するということも考えられます。
賃貸するに当たってはリフォームするなどある程度の資金が必要な場合もありますが、継続的に安定した収入を得られれば資金面での不安を減らすことができます。
シニア世代のマイホーム賃貸を支援する非営利法人JTIが設立されました。
同機構では一定の条件を満たしたマイホームを最長で終身借り上げ、国のサポートを受けて賃料収入を保証してます。
同機構の主な業務には「マイホーム借り上げ制度」の実施、住替えに関する情報提供、住み替え型リバースモーゲージの開発・提供、転貸を通じた子育て支援と良質な住宅ストックの循環などがあります。
リバースモーゲージ(持ち家担保融資)って何?
リバースモーゲージとは、住宅・宅地などを担保にしてそこに住み続けながら老後の生活に必要な資金の融資を受け、死後にその住宅・宅地などを売却して元利金の返済に充てる制度です。
マイホームはあるが金融資産は少なく、年金などの収入も少ないという高齢者にとって、住み慣れたマイホームで生活しながら資産を現金化できる制度ということが言えます。
しかし、利用要件がとても厳しく、条件が緩和されないかぎり一般化しにくいというのが現状です。
国のリバースモーゲージ制度って何?
平成14年度から低所得の高齢者世帯を対象に「長期生活資金貸付制度」が導入されています。厚生労働省の支援で各都道府県の社会福祉協議会が運営していて福祉的性格を持ち、平成21年に「不動産担保型生活資金」に名称が変更されました。
高齢者の住まいと諸制度の関係は?
高齢期になると体力が衰えたり、判断能力が鈍くなったり、介護が必要になったりといった問題が生じてきます。高齢者になっても安心して暮らしていくために高齢者向けの施設や住宅に住み替えるというのも選択肢の一つでしょう。
従ってこれら施設や住宅などの概要について解説しておきます。また高齢者施設や住宅に関しては、公的介護制度との関係も深いので合わせてお話させていただきます。
高齢化の加速と核家族化で高齢者のみの世帯が増加傾向にあることや高齢者が単独で民間の住宅に入居するのが難しいという現状、高齢者が安心して住める住宅が少ないということから、その対策として平成13年に高齢者の居住の安定確保に関する法律が施行されました。
この法律は高齢者の生活支援を含めた新たな支援を行うため平成21年に改正・施行され、あわせて賃貸住宅だけでなく老人ホームの供給、高齢者居宅支援体制の確保に関する事項についても定めることになりました。
また平成23年の改正では安心居住支援の中核であった高齢者住宅の登録・紹介制度を廃止し、新たに「サービス付き高齢者向け住宅の登録」が創設されました。
床面積、施設のハード面、各サービス面に加え、長期入院などを理由に事業者から一方的に解約できないこと、前払い金の初期償却の制限や保全措置、返還ルールの明示など契約にも一定のルールが設けられています。
一方介護保険法が数年ごとに改正され、サービスの一部を外部に委託できる「新・特定施設入所者生活介護」や「通い」「訪問」「泊り」を中心に24時間 365日のサービスを提供する「小規模多機能型居宅介護」などが導入されました。
また、同年の改正では訪問介護と訪問看護の両サービスを24時間体制で提供する「定期巡回、随時対応型訪問介護看護」が創設されています。
また乱立する高齢者施設の管理などを目的として老人福祉法も改正され、「有料老人ホームの定義の見直し」によって1人以上の高齢者に食事、家事、介護、健康のいずれかのサービスを提供する施設は原則として有料老人ホームの届け出が必要です。
この他、高齢者の移住、住替えを経済的に支援する制度としてシニアのマイホーム借り上げを行う「移住住み替え支援機構(JTI)」が国土交通省の支援で設立されました。
またリバースモーゲージを扱う金融機関や自治体も増えつつあります。
高齢者向け住まいの種類と特徴
入居条件は?
介護保険施設の入居条件は、65歳以上、原則要介護1以上ですが、他の福祉施設や高齢者施設・住宅では、60歳以上か配偶者のどちらかが60歳以上であれば入居可能なケースもあります。
次回は老後生活の基盤、年金に関する税金などについてです。
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。