確定拠出年金は、拠出された掛金が個人ごとに区分され、掛金と運用収益をもとに給付額が決まる年金制度だ。
そして、掛金の運用指図は、加入者自らが自己責任で行うところが、他の企業年金とは大きく異るところだろう。
確定拠出年金
私的年金 | 職域 | 企業年金 | 厚生年金基金 |
確定給付企業年金 | |||
確定拠出年金 | |||
中退共・特退共 | |||
非職域 | 個人年金 | ||
国民年金基金 | |||
確定拠出年金(個人型) |
確定拠出年金の加入対象者
- 企業型
- 個人型
1,企業型
- 厚生年金基金などの企業年金制度(中退共、特退共を除く)を有する企業。
- 確定拠出年金を採用した企業の従業員が加入対象。
2,個人型
- 上記以外の企業の従業員。
- 自営・自由業者など(国民年金第1号被保険者)。
確定拠出年金制度の加入
企業型
1人以上の雇用者を雇用する企業が任意に加入し、当該企業の一定の資格を満たした雇用者全員が加入。
個人型
自営業者(第1号加入者)、雇用者(第2号加入者)どちらの場合も、実施主体である国民年金基金連合会に申請することにより加入。
確定拠出年金の掛金
既存の企業年金制度がある企業の従業員の場合「企業型」
- 掛金は企業が拠出。
- 拠出できる推金の限度額は従業員1人当たり、年間30万6000円(月2万5500円)。
既存の企業年金制度のない企業の従業員の場合
- 企業が確定拠出年金制度を採用した場合は「企業型」
- 掛金は原則として企業が拠出。
※平成24(2012)年より従業員も拠出することができるようになった(マッチング拠出)。 - 拠出できる掛金の限度額は従業員1人当たり、年間61万2000円(月5万1000円)。
企業が確定拠出年金制度を採用しない場合は「個人型」
- 国民年金基金連合会が実施する「個人型」に加入。
- 個人1人当たりの拠出限度額は年間で27万6000円(月2万3000円)。
- この場合の掛金は給与天引きが原則。
自営業者(国民年金第1号被保険者)の場合「個人型」
- 国民年金基金連合会が実施する「個人型」に加入。
- 個人1人当たりの拠出限度額は年間で81万6000円。
※月6万8000円、国民年金基金または付加年金の掛金との合計額。
ただし、国民年金の保険料を支払っていない期間は拠出できない。
確定拠出年金の税務
企業型
- 企業の掛金は企業の損金(必要経費)。
- 「個人型」と「企業型」で従業員が拠出の場合、その掛金は小規模企業共済など掛金控除の扱い。
確定拠出年金の運用
運用商品は預貯金、公社債、投資信託、保険、株式。
確定拠出年金の給付
60歳以降に受給開始(以下の①図を参照)
企業型加入者の自動移換
企業型の加入者が離転職などで資格を喪失した場合。
- 6カ月以内個人別資産を他の制度に移す。
- 脱退一時金を請求する。
以上の手続きをする必要がある。
※注:手続きをしない場合は、国民年金基金連合会に自動的にその財産が移換される。
自動移換された場合。
特定運営管理機関手数料、管理手数料、国民年金基金連合会手数料が資産から差し引かれる。
「自動移換者」は「加入者」でも「運用指図者」でもないという扱いになるので、その間は運用ができず、手数料を差し引かれるだけなので資産が目減りしていくことになる。
また、自動移換の間は、年金などを受け取ることができない。
受け取るためには企業型・個人型の確定拠出年金に資産を移換する必要がある。
図①確定拠出年金
主な制度名 | 確定拠出年金 |
運用指図 | 加入者本人が運用指図を行い、運用リスクは加入者が負う |
資産管理 | 資産残高(掛金と運用収益の合計額)は個々の加入者ごとに記録管理 |
転職時の年金資産の移換 | 加入者が転職した場合は、転職先の確定拠出型制度に年金資産を移換(ポータビリティが高い) |
掛金 | ・数理計算は不要 ・運用の良し悪しにかかわらず、掛金は一定 |
給付 | 年金額は運用実績によって変動する |
受給権保護 | 企業など制度関係者の忠実義務や行為準則を定める |
企業会計上の取り扱い | 費用は発生するが、給付債務は発生じない |
メリット | |
加入者側 | ・転職に際し、ポータビリティが高い ・加入者ごとの年金資産が明確 ・運用方法や資産構成割合を選択できる ・運用が好調であれば年金給付額が増える |
企業側 | ・掛金の追加拠出義務は生じない ・退職給付債務に基づく会計処理は不要 |
デメリット | |
加入者側 | ・運用成績により給付が変動するため、将 ・来の退職後収入としての保証が劣る ・運用リスクを負う ・安定性を重視し、保守的な運用になりやすい ・企業がリスクを負わないため、運用収益向上の企業の動機づけが弱い |
企業側 | ・加入者ごとの詳細な資産運用の記録などの管理が必要 ・資産運用状況が良好であっても掛金は軽減できない ・加入者に対して投資教育が必要 |
抜粋:企業年金連合会資料を一部修正
図②確定拠出年金、企業型と個人型の比較
企業型 | 個人型 | |
加入対象者 | 60歳未満の人 | |
厚生年金被保険者(企業の従業員) | ・国民年金の第1号被保険者(自営業者など) ・既存の企業年金および確定拠出年金の企業型の対象になっていない厚生年金被保険者(企業の支援のない従業員) |
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加入 | 労使合意で定めた企業型年金規約について厚生労働大臣の承認を受ける | 国民年金基金連合会に申請 |
拠出限度額 | ・原則として、企業が拠出する ・勤務先が確定給付企業年金を実施していない場合月額5万1000円(年額61万2000円)厚生年金基金 ・適格適職年金を実施している場合月額2万5500円(年額30万6000円) ・事業主掛金に上乗せして加入者が拠出する場合(マッチング拠出)は事業主掛金との合計額が拠出限度額となる |
個人拠出のみ ・自営業者など月額6万8000円(年額81万6000円)から国民年金基金などの掛金を控除した額 ・企業の支援のない従業員月額2万3000円(年額27万6000円) |
ポータビリティ(加入期間の通算) | ・資産残高(掛金と運用収益の合計額)は各加入者ごとに記録管理 ・加入者が離転職した場合は離転職先の確定拠出年金制度に年金資産を移換できる ・第3号被保険者など、制度に加入し得ないものとなつた場合には、国民年金基金連合会が管理する「つ なぎ勘定」に当該加入者に係る資産を移換 |
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運用 | ・加入者が年金資産をどの運用商品で運用するか決定。加入者が運用指図を行う ・運用商品は、預貯金、公社債、投資信託、保険、信託商品、株式などとする ・運営管理機関は加入者に3つ以上の商品を選択肢として提示 ・運営管理機関は、加入者に対し、少なくとも3カ月に1回以上の商品の預替え機会を提供するとともに、運用商品などに係る情報提供などを行う |
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給付(支給事由) | ||
老齢給付金 | ・原則60歳から受給可(60歳時点で最初の拠出から10年以上経過している場合) ・10年に満たない場合は次の通り 8年以上:61歳、6年以_L:62歳、4年以上:63歳、2年以_L:64歳、1月以上:65歳 |
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障害給付金 | 加入者が高度障害の場合に支給 | |
死亡一時金 | 加入者が死亡の場合にその遺族に支給 | |
脱退一時金 | 加入者であった者が制度に加入し得ない者とならたときはその者の拠出年数が3年以下、または一定の資産額の場合に受給できる注1 | |
税制 | ||
拠出段階 | 企業が拠出した場合は損金算入。個人が拠出した場合は、所得控除(小規模企業共済など掛金控除) | 所得控除(小規模企業共済など掛金控除) |
運用段階 | 年金資産に特別法人税・法人住民税を課税。ただし、平成25(2013)年度まで凍結 | |
老齢給付 | ・年 金:雑所得として公的年金など控除を適用 ・一時金:制度への掛金払込期間を継続期間とみなし、退職所得課税を適用 |
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障害給付 | 非課税 | |
死亡一時金 | 相続税法上のみなし相続財産 | |
脱退一時金 | 所得税、個人住民税を課税 | |
移管 | 加入者が離転職し、年金資産を移換する場合には、税制上の措置を継続 | |
加入者保護 | 加入者の保護を図る観点から、企業、国民年金基金連合会、運営管理機関、資産管理機関は法令および確定拠出年金規約を遵守し、加入者などのために忠実に義務を遂行する責任を負う | |
既存制度からの移行 | 企業型年金を実施する企業は、労使合意により、一定の限度額の範囲内で退職金制度および既存の企業年金など―の過去勤務期間に係る年金資産などを企業型年金に移換することができる | |
資産管理機関 | 企業型年金の制度において、企業が拠出した掛金を年金資産として企業財産から分離・保全などを行うものとして制度上位置づける | |
運営管理機関 | 個別の運用商品の提示、個IJIJの運用商品などに係る情報提供、加入者の運用指図のとりまとめ、加人者個人ごとの持分などに係る記録管理などを行うものとして制度上位置づけ、厚生労働大臣および金融庁長官・地方財務局長の登録制とする |
注意1
①資産(累計拠出額)が50万円以下の場合、企業型加入者は個人型に移換すれば、中途引出しが認められる。
②資産が1万5000円以下なら、無条件で中途引出しが認められる。
抜粋:企業年金連合会資料に一部加筆
ではまた。CFP® Masao Saiki
※この投稿はNPO法人日本FP協会CFP®カリキュラムに即して作成しています。