遺産分割協議
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こんにちは、MSインテグラル・デザイン研究所の斉木です。 今回は、遺産分割について解説しましょう。

ファイナンシャルプランを進める上で、遺産分割に関する知識は不可欠だ。

そして、個人の家計分野においても人生プロセスの仕上げでもある相続に関する概要は抑えておきたいところだ。

そこで今回は、共同相続人間における具体的な分割協議と分割方法について、そして家庭裁判所の手続きや分割基準について解説しながら、遺産分割協議書の記載事項や名義変更等の実務についても触れてみましょう。

遺産分割の落とし穴

例えば、遺産分割のやり直しに至った次のような判決があります。

参考事例▼

分割不可能な土地を相続した相続人Aが、他の相続人Bに対して代償分割として金銭を渡すという分割を行いました。

Aは相続した土地を売却し、諸経費や税金を差し引いたものから代償財産としてBに金銭を渡す予定でしたが、その土地が予定の金額で売却することが出来ず、相続税の納税すら困難な状態になってしまったのです。

これに対して課税庁は、第二次納税義務に則り、Bに対してAの相続税を納付すべき課税処分を行いました。

Bは、代償分割として金銭を受け取ることが出来ないだけではなく、Aについての相続税を負担する義務を負うことになってしまったのです。

そこでBは、代償分割を解消すれば、Aの相続税にかかわる第二次納税義務は免れると考えA、B同意の上で遺産分割をやり直しました。

しかし、課税庁は遺産分割のやり直しは贈与にあたるとして新たな課税処分を行ったため、その取消を求めて裁判が行われることになりました。

そもそも遺産分割協議のやり直し自体は、相続人全員の同意があれば可能です。

しかし、遺産分割協議のやり直しは、税務上からすると新たな課税関係が生じることになります。

判決においても、遺産分割協議の内容に関して不履行があったとしても、それをもって遺産分割協議の無効を主張することはできないと結論付けています。

安易に遺産分割を行ったがために問題を生みだしてしまった事例です。

法定相続分と分割協議

相続人が数人いれば、財産は共同相続人の共有ということになりますが、これを各相続に人に帰属させる方法が遺産分割です。

そして、遺産分割の方法には、2種類の方法があります。

1,指定分割(民法908)

指定分割とは、被相続人が遺言で分割の方法を定めたり、分割方法を定めることを第三者に委託する行為をいいます。

遺言による遺産分割の指定は、遺産の全部はもちろんのこと、遺産の一部についても指定することができます。

共同相続人の一部または遺産の一部についてのみ指定されている場合には、残りの部分について協議をして分割方法を決めなければなりません。

※指定の方法は、財産の種類だけでもいいし、個別的な財産を指定してもいい。

2,協議分割(民法907)

協議分割とは、共同相続に全員の協議によって分割する方法です。

被相続人の遺言がない場合この方法によりますが、遺言が存在する場合であっても協議により遺言と異なる合意が成立した時には協議分割が優先されます。

共同道相続人の一人から分割の要求があれば、他の相続人には協議に応じる義務が生じます。

協議は全員の参加と合意を必要とし、一部の相続人を除外したり、一部の相続人の意志を無視して行った場合には無効になります。

分割協議はどのような分割方法によってもいいですし、その割合も自由に決めることができます。

例えば、共同相続人の中で、取得ゼロの人がいたとしてもかまいません。

  • 兄弟姉妹には遺留分はありません。
  • 直系尊属のみが相続人である場合には、財産の3分の1が遺留分になります。
  • 前記以外の場合、財産の2分の1が遺留分になります。
  • 相続人が複数人いる場合には、上記の遺留分を法定相続分の割合で分割します。

4種類の分割方法

遺産分割は遺言による指定があれば、指定相続分で、なければ法定相続分になります。

しかし、特別受益者や寄与分権利者がいれば、これらを考慮する必要があります。

現実の財産分割方法には次の4つがあります。

1. 現物分割(一般的な方法)

個別財産について数量、金額、割合を決めて分割する方法です。

遺産が土地であれば、土地を分筆し、相続人単独の所有権移転登記を行なうことになります。

※登記が完了していないとしても現物分割であることには変わりない。

例えば、自宅の土地・建物を相続人Aが現金300万円を相続人Bがとういかたちでもいいです。

この方法では、各財産が単独所有になるので権利関係が明確になますが、財産の価値が違うため、法定相続分で分けるのは実際には困難です。

2. 共有分割

現物分割の一種で、自宅の土地・建物を相続人Aが持分2分の1・相続人Bが持分2分の1といったように現物を共同所有にすることです。

この方法ですと、法定相続分通りに分けることができますが、不動産を共有にすると、売却・使用時に権利関係が複雑になります。

3. 換価分割

共同相続人が相続によって取得した財産の全部または一部を金銭に換価し、その換価代金を分割する方法です。

例えば、自宅の土地・建物を売却し現金化した後、共同相続人間で現金を分割取得するといったかたちです。

この方法だと、分割困難な財産が現金化されるため、分けやすくなりますが、売却するのに手間と時間や費用ががかかります。

4. 代償分割

共同相続人のうち特定の人が遺産を取得し、その代償として相続した人が自己の固有財産を他の相続人に支払う方法です。

例えば、遺産の土地・建物を相続人Aが相続する代償として、相続人Bへ相続人Aが現金を給付するといったかたちです。

この方法の場合、現在居住しているなど、どうしても必要な不動産を取得することができますが、代償金の額面によっては争いが起こることもあります。

実際には、遺産が自宅の土地・建物のみといったケースが多く、代償分割を選択しなければいけない場合も多いです。

また家庭裁判所の審判でも、代償分割を求められるケースがよくあります。

どうしても必要な不動産がある場合には、事前に代償金の額を話し合った上で準備しておくことが大切です。

また不動産の共有分割は、お勧めできません。

 

注意点▼

ここで注意したいことは、代償分割によって取得した財産は被相続人から承継相続したものではありませんが、遺産協議による債権であり、実質的には相続によって取得したのと同様の扱いになるといことです。

そのため相続人の課税価格は、代償財産の価額を加えたものとなります。

 

つまり、課税価格の合計額は代償分割により変わることはないということです。

また、代償財産としてわたしたものが、現金ではなく、譲渡所得の基因となる資産の場合、つまり、土地や家屋といった場合は、その代償財産を渡した人は、その財産を時価により譲渡したものとみなされ、譲渡所得税の課税対象となります。

そして、代償分割は相続財産の分割の場合以外は対象となりません。

つまり、遺産分割が完了した後、分前の少なかった他の相続人に現金を渡すといった行為は贈与にあたり、贈与税の課税対象になります。

紛争になった場合の手続き

1,調停分割

  • 協議が調わない場合に、調停注1により分割する方法。
  • 審判に先立って調停による分割が試みられるのが一般的。

調停分割は、家庭裁判所において調停委員2名が当事者に加わって協議を行い、分割を成立させる方法です。

  • 審判と異なって、法定相続分には拘束されない。
  • 調停分割が成立すれば、遺産分割協議書に代わる調停調書が作成される。

2,審判分割

調停が不成立に終わった場合に、家庭裁判所の審判により分割する方法です。

審判分割は、裁判の一種であり、裁判官は「遺産に属する物または権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して行います(民法906)」。

しかし、裁判官は法定相続分に拘束され、全共同相続人の合意がない限り、相続分に反する分割はできません。

具体的な分割の態様は、裁判官の裁量に委ねられています。

例えば、

  • 現物分割のほか、遺産を売却して換価分割することもできる。
  • 共同相続人の1人に遺産全部を承継させるが、同時に他の相続人に対する債務を負担させて現物分割に代えることもできる。
  • 一定期間分割を禁止することもできる。
分割の実行
図表3-2(分割の実行)
注意点▼

(注1)調停:民事上の紛争解決のため、裁判官を主としつつ、第三者(調停員)の仲介によって、当事者が互いに譲歩して、紛争解決の合意を図ることをいいます。遺産分割調停を含む家事調停は、家事事件手続法で規定されています。

遺産分割協議書

遺産分割協議書
図表3-3 遺産分割協議書

1,分割協議書

遺産分割が終わり、各相続人が取得すべき財産が確定したら、後日の紛争予防のため、下記のよ
うな遺産分割協議書を作成し、証拠として残しておくべきです。

また、財産の名義変更のため、法務局、銀行などに遺産分割協議書を提出する必要があります。

(1)分割協議書の記載事項

分割協議書は、法令等で特に定められた形式はありません。

  • 相続人全員が署名(または記名)・捺印することが必要。
  • 捺印は、印鑑登録済みの実印を用いる。
  • 相続登記を行う場合は、分割協議書には各相続人の実印を捺印した上、全員の印鑑証明書を添付しなければならない。

通常は、相続人全員が一堂に会して協議し、合意結果を協議書にまとめますが、あらかじめ1人の祖続大が協議書を作成し、他の相続人が順次これに署名・捺印して作成する方法でもかまいません。

遺産分割協議書に全員が異議なく署名・捺印したときには、遺産分割協議は完全に終了します。

  • 相続人の一部を欠いたままなされた遺産分割協議は、原則として無効である(最高裁家庭局回答昭32・6・21)。
  • 相続人の遺産分割協議での意思表示が、錯誤または詐欺による場合は、遺産分割協議は無効または取り消されることがありうる(錯誤につき、最判平5・12・16)。
  • 相続人が遺産分割協議で決めた約束(例えば、母親の面倒をみるのを条件に不動産を単独所有とするなど)を守らなかった場合、債務不履行に基づく解除が可能か問題となるが、判例はこれを否定している(最判平元・2・27)。
  • 相続人全員の意思に基づき、遺産分割協議を合意解除することは、判例も認めている(最判平2・9・27)。
  • 当初行った遺産分割協議に瑕疵があったこと等以外の遺産分割のやり直しは、税金上は贈与等に該当するものとして贈与税の対象となる。
(2)相続に関する手続きの実務(名義変更など)

実務上、被相続人の財産を相続人に承継させる手続きは非常に煩雑であり、個人では難しい場合もしばしば生じます。

ここでは具体的な財産の承継手続きについて、次表を参照ください。

手続の種類 手続の窓口 主な提出書類 備 考
死亡届 亡くなった方の住所地の市区町村役場 ・死亡診断書など 死亡を知った日から7日以内
火葬(埋葬) 寺院・墓地

管理事務所

・火埋葬許可証

 

市区町村役場で交付
厚生年金【年金の停止・手帳の返却】 年金事務所 ・年金手帳

・死亡を証する書類

(戸籍証明など)

死亡の日から10日以内
国民年金【年金の停止・手帳の返却】 市区町村役場 ・年金手帳

・死亡を証する書類

(戸籍証明など)

死亡の日から14日以内
健康保険証【廃止】 市区町村役場・勤務先等 ・健康保険証
運転免許証【廃止】 所轄警察署 ・運転免許証
パスポート【廃止】 都道府県庁旅券課 ・パスポート
その他免許・資格証【廃止】 都道府県・市区町村

発行元窓口

・免許証・資格証
携帯電話【廃止】 電話会社(郵送手続可)
 

 

葬儀(埋葬)費用の受領

市区町村役場(国民健康保険後期高齢者医療者) 死亡を証する書類

保険証・印鑑

振込先口座番号

葬祭費の領収書など

 

 

死亡の日から

2年以内

全国健康保険協会(協会けんぽ加入者) 事業主の証明

死亡を証する書類

保険証・印鑑

払込口座番号

葬祭費の領収書など

組合窓口

(組合健保加入者)

各組合窓口に

問い合わせる

高額医療費還付手続 市区町村役場(国民健康保険後期高齢者医療者) ・領収証

・保険証

・振込先の通帳

・印鑑 など

全国健康保険協会(協会けんぽ加入者)
組合窓口

(組合健保加入者)

各組合窓口に

問い合わせる

生命保険金受取請求 生命保険会社 ・死亡保険金支払請求書

・保険証書

・所定の死亡診断書
・被保険者の戸籍証明・除住民票

・請求人の戸籍証明

・契約時の印鑑

・印鑑証明書

・振込先口座番号

・請求人の本人確認資料 など

 

 

死亡の日から

3年以内(各保険会社に確認のこと)

土地建物などの不動産所有権移転登記 不動産所在地の法務局 ・相続登記申請書
・相続人全員の印鑑証明書・被相続人の戸籍・除籍謄本・改正原戸籍謄本・戸籍附票等・相続人全員の戸籍謄本・住民票・固定資産評価証明書・遺産分割協議書(分割協議後の場合)
※登録免許税が必要 固定資産評価額×4/1000
預貯金名義変更 銀行・ゆうちょ銀行窓口 ・銀行・ゆうちょ銀行の所定の請求書

・相続人全員の印鑑証明書

・被相続人の戸籍・除籍謄本・改正原戸籍謄本・戸籍附票等

・相続人全員の戸籍謄本・住民票

・被相続人の預貯金通帳又は預貯金証書と届出印

・遺産分割協議書(分割協議後の場合)など

詳しくは各金融機関に確認のこと
電話加入権移転 各電話会社 ・被相続人の戸籍・除籍謄本

・承継人の戸籍抄本・印鑑 など

電気・ガス・水道・NHK受信料 各窓口(電話連絡・郵送手続) ・変更届出書類

通帳・印鑑・領収証の控え など

自動車・バイク等名義変更 被相続人住所地管轄の陸運局 被相続人の戸籍・除籍謄本・改正原戸籍謄本・相続人の戸籍謄本・印鑑証明書・車検証・自賠責保険証・保管場所証明書
など(使用本拠が変わる場合)・ナンバー変更要の場合は車を陸運局へ持込み
クレジットカード 加入会社(電話連絡・郵送手続) 加入会社によって異なる。

その他、ビデオレンタルのカードや会員権など、亡くなった方のお名前が入っているもの全て、変更や廃止等、なんらかの手続きが必要となります。

ではまた。

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